生物多様性が急激に失われつつある現状は、私たちの生活や地球環境にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。その原因と結果を探りながら、未来に向けての課題を考えます。
生物多様性減少の背景
生物多様性の減少は、乱獲や森林破壊、気候変動が主な原因とされています。国際NGO「世界自然保護基金(WWF)」の報告によれば、例えば大型クジラは海洋の生態系を豊かにする重要な役割を果たしていましたが、商業捕鯨が始まった約1000年前から個体数が66%から90%も減少しました。その結果、海洋の栄養循環や漁場の形成能力が低下しているのです。
また、過去30年間で地球上の430万平方キロメートルの土地が乾燥地帯に変わり、干ばつや山火事といった気象災害への脆弱性が高まっています。
食料供給と生計への影響
生物多様性の減少は、人間の食料供給にも深刻な影響を与えています。西アフリカや中央アフリカの農村部では、野生動物の肉が動物性たんぱく質の80%を占めていますが、野生動物の減少はその供給を脅かしています。
漁業も例外ではありません。1968年にはカナダ東部でのタラ漁獲量が81万トンに達しましたが、2019年には1万トン余りに激減しました。これは漁業資源の枯渇が主な原因です。
さらに、淡水魚の消費も危機に直面しています。現在、人類は約2500種の淡水魚を消費していますが、野生魚の減少は持続可能な利用を困難にしています。
生態系エンジニアの役割
生態系における「エンジニア」とも呼べる生物たちは、他の種や環境に多大な影響を与えています。例えば、マッコウクジラは水をかき混ぜることで海洋生態系を活性化させ、バクはアマゾンで種子を運び森林再生を助けています。しかし、それらの役割を果たす生物が減少することで、生態系全体がバランスを崩しつつあります。
人間社会への影響
生物多様性の喪失は、人間の精神面や健康にも影響を及ぼしています。ある研究では、鳥のさえずりを聞くことがストレス軽減に繋がることが確認されています。また、野生動物とのふれあいは芸術や文化にも影響を与えてきましたが、都市化や自然破壊により「体験の絶滅」が進行しているとの指摘もあります。
さらに、生物多様性の喪失は感染症の増加とも関連しています。例えば、小型哺乳類の種が減少することで、ハンタウイルスなどの感染症が拡大するリスクが高まることが分かっています。
未来への課題
私たちが自然から受け取る恩恵、いわゆる「生態系サービス」には、作物の受粉や土壌の保全、飲み水の確保などがあります。生物多様性がこれ以上失われると、これらのサービスも大きな打撃を受けるでしょう。
今後、生物多様性を守るためには、乱獲の防止、持続可能な漁業の推進、森林保全の強化が必要です。また、私たち一人ひとりが自然とのつながりを見直し、環境保護に貢献する姿勢が求められています。
結びに
生物多様性の減少は、地球規模の問題であり、人類の未来に直結する課題です。自然と共存し、持続可能な社会を築くためには、今こそ行動が必要です。
https://jp.reuters.com/world/environment/E4WA3TZ2EJPB3PTST7FH3TR53E-2025-01-18/

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