1章 序文 : 持続可能な社会プラウトヴィレッジ 第三版

 

 プラウトヴィレッジは資本主義、社会主義に代わる社会制度で、お金が存在しない仕組み。持続可能な社会でもある。 


 戦争、貧困問題、自然破壊、気候変動、感染症と世界中でたくさんの社会問題が発生し続けている。一つずつの解決策を考えていると、平和な社会の実現ははるか遠くに思える。しかし、それらの問題の根本原因となっているある一点に気づけば、実は解決策はシンプルであることが見えてくる。その根本原因とは「お金の仕組み」のことで、あらゆる社会問題は、直接的、間接的にお金と関係している。


 そのために、人間は自分達の生き方を考え直す必要がある。それは、何のために生き、どのようにして暮らしていかなければならないかということ。人間が生きていくためには自然も科学技術も必要だが、ここからはプラウトヴィレッジとはどういった社会かについてまとめている。簡単な結論から言えば次のような世界となる。


 世界各地域では5万5000人前後の住民からなる直径5.5kmのプラウトヴィレッジという自治体が基本となり、食料、電力、住居、家電、生活品はすべて地元の資源で、地元の住民によって作られ、よってそれらを誰もが無償で享受する。住居は自然素材のストローベイルハウスで建てられ、自然へ返せる造りが基本となる。この住居は藁(ワラ)、早生桐、竹、石、土など自然素材が使用され、高気密、高断熱化された住居で終日冷暖房が行われる。その住居を誰もが自治体から無償で借り受ける。

 電化製品はほとんどが化石資源やレアメタルを使わず作られ、資源の枯渇問題がなくなる。ただこれまでのハイテク技術ではなくミッドテック(ハイテクとローテク”手作業”の中間)が主体となる。生活品は地域で採集できる原料内で生産され、無料で得る。生産数は住民の人数分が上限となり、製品は再利用を前提とした設計となるため原料の採集は必要最低限になり、自然破壊が無くなる。

 そして家庭からの排水はすべて住居隣から地面へ浸透させる。その為に化学物質が入っていない洗剤、石鹸、シャンプーが使用される。これによって海も川も汚染されることはなくなり、もとの澄んだ状態に戻る。

 電力は海や川などでの振り子式潮流(ちょうりゅう)発電やマグネシウム電池を基本に考え、それに様々な発電技術を組み合わせる。そこに小型の風力発電などを組み合わせる。こうして電力は海や自治体の至る所で作られ、発電源を多様化して合計量を増やす。貨幣社会ではないので、莫大な電力は必要なくなる。

 食料は各家庭に提供される農地で、農薬を使わず自然の力に任せる自然農法で自給自足を行う。これにより土壌汚染がなくなり、貧困に陥いる住民もいなくなる。

 地元の森林も自治体が管理し、生涯残す樹木と伐採用樹木を区別して管理し、計画的に植樹もする。そうすることで、自然の多い自治体が世界中で維持される。

 教育は貨幣社会のような学校はなくなる。プラウトヴィレッジでは子供から大人まで、誰もが好きなことを一人もしくはグループで行なっている。つまりそのグループやサークルが基本単位となり、塾を選ぶように子供や大人が好きなものを選択して参加するか、独自に活動する。そして誰もが好奇心のあることに自己責任で取り組むことを幼年期から行う。

 朝から晩まで働くような仕事はなく、住民は公共事業がある場合のみ。それは週に数時間程度。それ以外の時間は自分の好きなことをして過ごす。そして学校、会社、自然破壊、汚染、ゴミ、貨幣、税、貧困などはなくなる。年金制度もなく、食べ物も住居も自分たちで作るので、誰もが生涯不自由なく生きていける。

 もし自然災害が起こり自治体が破壊されても、復興は地元の資源で行うため資金は必要なく、復興後の経済がうまく回るかも考える必要がない。必要なのは人手と地元の資源であり、人々には自由な時間があるので復興も迅速に行われる。

 こういった自治体で構成される国が増え、文化と多様性が尊重され、各国へはパスポートなしで自由に行き来できる。主な交通手段は、自治体内では地上を時速20キロで走る自動車、自治体間の中長距離移動は電車で、全て電気が動力源。
 プラウトヴィレッジでの生活にはスピードを求められる仕事がなく、誰もがのんびり生活しているため、地上ではスピードではなく安全運転が第一優先となる。また自治体の端(はし)から中心までの半径は2.75kmなので、時速20キロで走っても9分で到着する。遠出をする時は電車で移動し、着いた先の自治体で車を借りて目的地に向かう。こういったことにより、交通事故とそれによる死亡数のどちらもゼロを目指す。

 このようにしてつながった世界は、各国の代表者が集まる世界連邦という1つの組織によって統治され、国境はなくなり、貧困もなくなり、金銭や資源目当ての戦争も起こる理由がなくなる。世界の行き来が自由になることによって民族の交流が盛んになる。

 これは持続可能で人間の能力が最大限に発揮される社会の在り方で、貨幣がない社会。資本主義社会では金銭を得るため定年まで一日長時間働かなければならないが、地域社会が中心となり、地域の住民分だけ生産する社会に移行すれば、必要最低限の公共事業と資源の採集で事足りる。


 プラウトヴィレッジを作れば、世界中で見られる陸・海・空の環境破壊や社会問題はなくなる。しかし人間にとっては別の問題が残る。それは人間の人生には、怒り、後悔、不安、嫉妬、劣等感などの苦しみがあり、それらは人間の自我(エゴ)が原因となっている。この自我は思考のことで、思考が苦しみを生む。この思考を静めて無心になれば苦しみが和らいでいく。それは意識を一点に集中させることで可能となる。この継続によって無心が習慣化され、心穏やかな人生を作り出す。つまりプラウトヴィレッジでは、人間の心の部分にも取り組む。

 貨幣社会には様々な社会問題が存在する。次の表はその例と、プラウトヴィレッジでの解決策。

社会問題とお金とのつながり

分類

社会問題

お金とのつながり(原因・背景)

プラウトヴィレッジ

環境・資源

資源枯渇

企業は利益を出し続けなければいけないために原料を消費し続ける。従業員も自然破壊や無駄遣いとわかっていても、生活費を稼ぐために働く必要がある。

化石燃料・レアメタルを使用せず、リサイクル前提で解決する。


森林伐採

木を売ることで利益を得るために伐採が行われる。

貨幣社会ではないので、利益目的の伐採がなくなる。


海洋生態系の破壊

漁師は生計を立てるために漁を続ける(合法・非合法問わず)。

利益目的の乱獲がなくなる。


ゴミ問題

売れる商品に見せるため過剰包装が行われ、ゴミが増える(売上重視)。焼却できないものはそのまま埋立地へ送られる。

売るために商品を作ることがなくなる。


プラスチックごみ問題

安価で加工しやすいプラスチックに依存することで、企業は安くて丈夫な製品を大量に提供できるが、自然分解されないゴミが海に流出し、魚が誤飲、人間がその魚を食べる悪循環が生まれる。

プラスチックを使わず製品を再設計して作る。


在庫廃棄

利益優先のため商品を多めに生産し、余剰在庫が廃棄される。

貨幣社会ではないので、企業がそもそもない。


気候変動・温暖化

経済活動の活発化によりCO₂排出量が増加。

企業がなく経済活動もないので、CO₂排出が激減する。


過剰輸送(トラック輸送過多)

利益向上のため企業間競争・即日配送・顧客満足度向上・大量流通により物流が過密化。それによりCO₂排出の増加。

利益目的の輸送がなくなる。


過剰消費(広告・流行で消費を煽る構造)

広告・メディア・SNSなどによって消費欲求を刺激し、不要なものまで買わせて利益を上げる構造が常態化

貨幣社会ではないので、売る必要がなくなる。


野生動物の個体数減少・絶滅種の増加

生息地の開発(農地・住宅・道路)や乱獲、観光・商業利用(毛皮・ペット・漢方・土産品など)が利益を生むため、人間の経済活動が動物の生活圏を奪い、種の存続を脅かす。

貨幣社会ではないので、動物を利益目的に使わなくなる。

労働・経済

長時間労働

従業員は給料を得て生活を維持する必要があるため、命じられれば残業せざるを得ない。

貨幣社会ではないので、企業がそもそもない。


所得格差

稼ぐ能力や機会の違いが市場原理でそのまま格差に反映される。

貨幣社会ではないので、お金というものがない。


路上生活者

金銭的困窮により住居や生活手段を失う。

住居も食べ物も自給自足で無償享受するので路上生活者はいない。


少子化・人口減少

労働力の減少により国益・経済力が低下すると懸念される。

経済競争がないので少子化や国力低下は問題ではない。


年金制度の崩壊

財源不足により受給額が減少、制度維持困難に。

自給自足社会で移動の自由もあるので年金がなくても生きていける。

教育・格差

教育格差

教育機会が家庭の経済状況に依存。学費・塾代・私立校進学の選択が所得で大きく左右される。

就職、昇進、給与という概念がない。

医療・健康

医療へのアクセス格差

所得により受診控えや治療中断が発生し、早期治療・予防が困難になる。

自治体の仕組みとして、適任者による無償医療提供と医師候補者の育成。

犯罪・不正

政治腐敗

高給・利権・賄賂など金銭的誘因で腐敗が起きる。

お金がないので不正が起きにくく、推薦選挙による人格者選出で公正な統治が行われる。


窃盗・麻薬販売

非合法手段でも金銭獲得が可能なため、根絶が難しい。

貨幣社会ではないので、お金を稼ぐ必要性がなくなる。


児童売春・人身売買

極貧や家庭崩壊などにより子ども自身または保護者が金銭目的で売買に関与。仲介者は高収益を得られるためビジネス化。

貨幣社会ではないので、お金を稼ぐ必要性がなくなる。


いじめ

学校や職場など同じ人と一定時間一緒にいなければならない場所でいじめが起こる。学校・職場が生活の中心であり、お金(評価・進学・生活)と結びついているため、そこから離れられず圧力が強まる。

長時間誰かと一緒にいる学校や職場がないので、いじめが起こりにくい。


インターネット上の誹謗中傷

企業にとっては誹謗中傷や炎上はアクセス数を稼ぎやすく、それが広告収入につながるため、煽動的な発信が金銭的に「得」になる構造がある。

レアメタルの枯渇問題からスマホもインターネットも個人利用ができなくなる。

精神的問題

孤独・孤立・自殺

生活困窮・就職難・多重債務など経済的理由が背景となるケースが多数。支援体制にも財源が必要。

お金がなくても生きていけ、学校や職場からのストレスはない。

災害・健康

自然災害からの復興

街の再建には莫大な資金が必要。

地元の資源と人手があれば復興可能。


感染症拡大

人々が働いて給料を得るため人との接触が避けられない。

感染拡大を抑えるため自治体を閉鎖しても、全員が生活に困らない。

国際関係

国際紛争

国益・資源の奪取を巡る経済競争が争いを生む。

貨幣社会ではないので、国もお金を稼ぐ必要性がなくなる。


移民・難民問題

紛争・経済格差・海面上昇などから大量の人の移動。社会的摩擦や受け入れ困難が発生。

住居も食べ物も自給しているので住居を無償提供でき、移り住むこともできる。


貧困・スラム

低収入などで最低限の生活も営めない人々がスラムなどに集中する。そこでは暴力・病気・児童労働などの連鎖も起きる。

自給自足により、誰もが住居・食糧などを無償で享受できる。


 世界中の多くの人が解決策を考えてきた。しかし社会問題の数は、減るどころか山積みとなっている。これらの根本的原因は結局のところ、お金で生活を成り立たせている貨幣社会が不完全なため。この部分を変えなければ、問題はいつまでたってもなくなることはない。プラウトヴィレッジはこの全ての社会問題の解決案でもある。


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