5章 食と農業 : 持続可能な社会プラウトヴィレッジ 第三版

 

○貨幣社会の食生活

 貨幣社会での生活は、スーパーやコンビニで食材を買うことが多い。そのため、農薬、食品添加物、白砂糖が含まれた野菜、肉、加工食品を食べることが当たり前になっている。


 食品添加物は例えば、イーストフード、ショートニング(植物油脂)、凝固材、香料、乳化剤、pH調整剤、膨張剤、甘昧料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、防力ビ剤などがある。これらは「食品が美味しそうに見えるために」「長期保存できるように」「おいしく感じるように」するために使用され、消費者に気に入られ、購入され、利益になることを目的に使用されている。


 白砂糖は食後短時間で血液に運ばれ、血糖値が急激に上昇する。これを繰り返すとやがて血糖値を下げるためのインスリンの分泌量が減り、糖尿病になりやすくなる。


 もし家の近くの菜園で無農薬野菜を栽培すれば、そこで収穫し、新鮮なまますぐに食べられる。これが最も単純で、最速で、体に負担の少ない食の形となる。それが貨幣社会のように、大量安定生産、長距離輸送、長期保存、消費者獲得の条件が加わると、農薬、食品添加物、砂糖が含まれた自然の状態から離れた食材に形を変える。そしてストレス、食べ過ぎ、偏食、運動不足、過労、喫煙、飲みすぎなどが絡み合い、肥満、糖尿病、高血圧、ガン、脳卒中などが生活習慣病となっている。


○栽培方法

 農薬を使わない栽培方法には自然農法、有機栽培、協生農法などあり、自然農法でも人によってやり方がいくつかある。プラウトヴィレッジではこれらのどの方法でも良く、農薬は石油を原料とすることが多いため使用しない。

 自然農法は体や土地に有害な農薬や肥料を使わずに栽培する方法で、すでに国内外で行われている。この提唱者は福岡正信氏で、人間が手を加えず様々な植物が生い茂り、様々な昆虫などの生きものが生息した土地は肥沃で、そこからは栄養が豊富に含まれた作物が育つという原点に回帰した考え方。福岡正信氏の田は、三十数年間1度も鋤(す)いたことがなく、化学肥料、堆肥(たいひ)、消毒剤もかけたことがない。これで麦も米も約33m四方当たり10俵(600キロ)に近い収穫があったと述べている。この場合、成人男性1人が年間に必要とする米(玄米126kg)を自給するには、約229m²(≒ 15m × 15m)の面積という計算になる。


 人間が鋤鍬(すきくわ)で耕せる深さは10~20センチ。しかし草や緑肥の根は30~40センチ以上も耕してくれる。根が深く土地に入れば、その根と共に空気も水も地中に浸透していく。その根や微生物の死滅で土は肥沃化し軟らかくなる。やがてミミズが増え、モグラもまた土の中に穴をあける。このように自然が栄養ある栽培環境を整えてくれ、土壌は永久に肥沃で、公害を発生する要素はない。自然農法の原則は、無耕耘、無肥料、無除草、無農薬。


 次の表は米や野菜などを生産する上で必要な農地の広さなど。

成人男性 × 自然農による主食自給モデル

項目

水田自然農

節水型乾田直播

備考

1回の食事の米量(精米)

約104g(ご飯茶碗1杯分)

約104g(ご飯茶碗1杯分)

1日3食換算で計算

1日あたりの米消費量(精米)

約313g/日

約313g/日

厚労省の平均男性値に基づく

月間米消費量(精米)

約9.4kg/月

約9.4kg/月

ごはん中心の食生活を想定

年間米消費量(精米)

約114kg/年

約114kg/年

1日約313g × 365日

年間米消費量(玄米換算)

約126kg/年

約126kg/年

精米で約10%減と仮定

玄米の平均収量

約0.75kg/m²(約13m×13m=169m²)

約0.5kg/m²(約16m×16m=252m²)

収量の違いで必要面積に差が出る

必要面積(玄米126kg)

約169m²(約13m×13m)


約252m²(約16m×16m)


最低限必要な面積

安全マージン込み(+30%)

約220m²(約15m×15m)

約328m²(約18m×18m)

雑草・害獣・環境リスク考慮

より安全な確保面積(+60%)

約270m²(約16.4m×16.4m)

約403m²(約20m×20m)

不作・備蓄も含めた余裕面積


野菜自給に必要な面積計算

項目

数値・条件(メートル四方換算含む)

備考

年間野菜消費量(生換算)

約135kg/年

成人男性1人分

自然農での平均収量

約4kg/m²/年

野菜全体の平均

必要面積(年間135kg)

約34m²(約5.8m × 5.8m)

135kg ÷ 4kg/m²

安全マージン込み面積(+30%)

約44m²(約6.6m × 6.6m)

雑草・害虫・環境リスク考慮

より安全な確保面積(+60%)

約55m²(約7.4m × 7.4m)

不作・備蓄も含めた余裕面積


米と野菜を合計した成人男性1人分の年間必要面積

項目

水田自然農

節水型乾田直播

備考

米の必要面積(安全マージン込み)

約220m²(約15m × 15m)

約328m²(約18m × 18m)

米の自給に必要な面積

野菜の必要面積(安全マージン込み)

約44m²(約6.6m × 6.6m)

約44m²(同左)

野菜は水田・乾田関係なし

合計必要面積

約264m²(約16.2m × 16.2m)

約372m²(約19.3m × 19.3m)

米の面積差が大きく響く


年間の食料自給に必要なメートル四方換算面積(人数別)

人数

水田自然農+野菜

乾田直播+野菜

野菜のみ

1人

約16.2m × 16.2m

約19.3m × 19.3m

約6.6m × 6.6m

2人

約23.0m × 23.0m

約27.3m × 27.3m

約9.4m × 9.4m

3人

約28.9m × 28.9m

約33.4m × 33.4m

約11.8m × 11.8m

4人

約33.9m × 33.9m

約38.6m × 38.6m

約13.2m × 13.2m

5人

約38.0m × 38.0m

約43.1m × 43.1m

約14.8m × 14.8m

6人

約41.8m × 41.8m

約47.3m × 47.3m

約16.3m × 16.3m

7人

約45.0m × 45.0m

約51.0m × 51.0m

約17.5m × 17.5m

8人

約48.0m × 48.0m

約54.5m × 54.5m

約18.8m × 18.8m


 個人栽培の場合は節水型乾田直播で約372m²(約19.3m × 19.3m)の土地が必要となる。ただこれだと非効率なので20人程度からの集団栽培を行う。そうして一人当たりの農地面積は個人372m²から約15%削減され、約316m²を目指す。


個人栽培から20人規模の集団栽培による農地面積削減の内訳

削減要素

内容

削減率(目安)

解説

通路・境界の共通化

区画境界や人通路が不要になる

約7〜8%

個人区画だと各人に通路・境界が必要になるが、まとめて整形すると大幅に減少。

作業スペースの統合

各人の作業エリアを共有化

約3〜4%

用具置場・収穫物置場などを1か所に集約することで、土地の節約に。

農機・水設備の共有

給水・用具・小型機械を共同利用

約2〜3%

ポンプ・道具置き場・燃料置き場等の分散配置が不要になる。

作付計画の集約化

作物の輪作・混作・時期分散による土地活用効率

約2〜3%

土壌負担や連作障害を避けながら、作付密度を高められる。

予備地・失敗リスクの吸収

共用の予備地を班内で共有

約1〜2%

各人に予備地を設けるよりも共通予備地の方が効率的。


 今後、温暖化による水不足問題を考慮し、米の栽培は水田ではなく畑に直接種籾を撒く乾田直播を優先する。その際、種籾にアーバスキュラー菌根菌を混ぜて撒く方法を取り入れることで、根と菌が早期に共生し、栄養吸収や水分利用が向上する。その結果、成長が促進され乾燥耐性も強まり、畑からの米の収穫量向上が期待される。


  そして育てた作物からは種を採取し、それを洗浄、乾燥し、容器に入れて冷蔵庫などで保存する。
 こうした流れを各家庭が行うことで、生きていくために不可欠な食の知識を誰もが受け継ぐことができ、食の安全、災害時の食物が守られる。



○食用住居


 プラウトヴィレッジでは住民の住居6戸集まる部分の1戸を食用住居とし、住民が鶏飼育、アクアポニックス、キノコ栽培を行い、野菜、薬用植物、キノコ、魚、肉、卵を育てて共有する。

 アクアポニックスは魚の養殖(アクアカルチャー)と水耕栽培(ハイドロポニックス)を組み合わせた循環型の農業システム。アクアポニックスの仕組みは次のようになっている。

① 水槽内の魚が、エラや尿からアンモニアを出す。
② 水中のバクテリアがアンモニアを分解。
③ 植物の栄養である硝酸塩(しょうさんえん)になる。
④ ポンプで水が上段にある野菜槽へ送られる。
⑤ 植物が硝酸塩を吸収して育ち、水がきれいになる。
⑥ その水がまた魚の水槽に戻り、循環が続く。


 これで育てられる食用魚にはティラピア、コイ、フナ、ナマズ類、ニジマスなどがある。野菜ではレタス、ホウレンソウ、バジル、ミント、パクチー、トマト、キュウリ、ピーマン、チンゲンサイ、小松菜などが育てられる。この設備自体もレアメタルフリーで設計できる。

 またハーブなど薬用植物も育て、風邪、のどの痛み、頭痛、発熱、咳などの不調時には、住民が自ら対処する。

 同時にこの住居では鶏50羽程度も飼育する。各家庭がでた野菜くずや刈り取った雑草は鶏の餌にする。またアクアポニックスでは鶏のタンパク源として、メダカやドジョウ、カワニナやタニシ類、ミルワームという幼虫なども育てる。

食用住居

階層

活動内容

設計ポイント

2階

アクアポニックス(水槽+植物ベッド)

・日当たり良好でガラス張り多め、垂直多段栽培で面積効率化

・雨水を1階へ導水

・横幅広い滑り台+階段で外部からアクセス可能

1階

鶏小屋+運動場、キノコ栽培(室内・陰湿)

・鶏の運動空間確保、キノコ栽培に適した湿度環境

・鶏50羽(25人分のタンパク源目安)

・雨水タンク設置

 

食用住居で育てられるもの

種類

育てられるもの例

備考・特徴

魚類

ティラピア、コイ、フナ、ナマズ類、ニジマス、メダカ、ドジョウ

アクアポニックスの水槽で養殖可能

貝類

カワニナ、タニシ

鶏の餌や水質浄化に役立つ

昆虫

ミルワーム(チャイロコメノゴミムシ幼虫)

鶏のタンパク源や餌として活用

野菜

レタス、ホウレンソウ、バジル、ミント、パクチー、トマト、キュウリ、ピーマン、チンゲンサイ、小松菜、ネギ、ニラ、枝豆、ラディッシュ、カブ

水耕栽培(植物ベッド)で育成

ハーブ

タイム、ローズマリー、オレガノ、セージなど


鶏卵(鶏から採取)

鶏50羽程度の飼育で住民25人分の供給目安

鶏肉

鶏の飼育による主要なタンパク源

キノコ

シイタケ、エノキ、マイタケ、ヒラタケ、ナメコ

1階のキノコ栽培室で育成


食用住居で育てやすい薬用植物

病状

効く植物名(食用住居で育成可能)

効果・使い方のポイント

風邪全般

ミント、バジル、パクチー、タイム、ローズマリー

抗菌・抗炎症・免疫強化。お茶や蒸気吸入で活用。

のどの痛み

ミント、タイム、ローズマリー

のどの炎症緩和・鎮痛。うがいや煎じ薬として使用。

頭痛

バジル、ローズマリー、ミント

血行促進・鎮痛。香りを嗅ぐ、煎じて飲む。

発熱

ショウガ(栽培可能なら)、ミント、ネギ、ニラ

発汗促進・体温調整。温かいお茶や料理で体を温める。

消化不良

ミント、バジル、パクチー

消化促進。食後のハーブティーや料理に。

咳・痰

タイム、ミント、ローズマリー

鎮咳・去痰作用。蒸気吸入や煎じて服用。

免疫力低下

バジル、ローズマリー、ニラ、ホウレンソウ

抗酸化・免疫強化。食事に取り入れて日常的に摂取。

血行不良

ローズマリー、バジル

血行促進・冷え性改善。ハーブティーや料理に。


コメントを投稿

0 コメント