○住居設計
日本の住宅の多くは断熱性が低いため、冬にいくら暖房しても熱は奪われていき、窓には結露(けつろ)が発生する。この状態で暖房を続けても電力の無駄使いとなる。そのため断熱材を使い、熱が逃げる部分を作らない。これに複層ガラスや24時間の機械換気を加えることで、夏も冬も冷暖房を24時間使いながら、低い電力量で済むようにする。
またビル、マンション、住居で使用されるコンクリートは、その製造過程で二酸化炭素を大量に放出し、地球温暖化に大きな影響を与えていることから、使用量を減らす必要がある。
こういった問題含め、充分な家に住めない貧困、難民問題などにすぐに対応しながら、今からでも作り始めることができ、かつ世界中で持続可能な家の在り方を考えると、基本素材は早生桐(そうせいぎり)、竹、藁(わら)、土、粘土、石、石灰、水となる。
藁は稲や小麦などの茎を乾燥させたもの。稲は日本からインドまでのアジア圏で多く作られる。麦はアフリカ、ヨーロッパ、アジア、ロシア、オーストラリア、カナダ、アルゼンチンなど世界中で作られている。そのため藁はどこでも得ることができ、これを束ねて約50cm幅のブロックにしたものを断熱材とし、住居の柱と柱の間に積み上げていく。その藁壁の内と外に土を貼り付けて土壁を作る。こういった家はストローベイルハウスと呼ばれ、気密性・断熱性が高くなる。ベイルは干し草や藁を圧縮してブロックの形にするベーラーという農業機械によって作られる。
また砂、粘土、藁などに水を混ぜて土壁やレンガ壁を作るコブやアドベという建築方法も、昔から各大陸で見られる。藁など繊維質を混ぜると、細長く伸びた藁が土と土をつなげ、コブの引張強度は高まる。
これらの土壁は風雨にさらされ弱くなることから、油を混ぜた漆喰などをさらに外側に塗り、防水性、耐久性を高める。
この住居内側の土壁は、冬場の太陽光などの熱の蓄熱もする。それにより太陽が沈んだ後も暖かさが持続する。
壁の厚みによる蓄熱の違い
夜間に放熱を最大化する工夫としては次の要素があげられる。
・内壁表面は塗装せず土のまま(または漆喰よりも吸熱性のある素材)が理想。
・温風の吹き出し口を壁の近くに設置し、壁全体をまんべんなく温める。
・外気が入らないように断熱性の高い窓・建具を併用。
プラウトヴィレッジの住居設計
○家庭排水
家庭から出る主な排水は、洗濯機、台所、洗面所、風呂場、トイレからだが、これらをまとめて処理する方法として、水洗式バイオトイレを使用する。これは家庭排水を発酵槽の中へ流し、その中の微生物が排水を飲用レベルまで浄化するもの。この微生物は人間の排泄物もトイレットペーパーも分解する。水洗用の水は雨水をタンクに貯めて使用する。設備の素材も石油素材の配管は使用せず、粘土を1000℃以上の高温で焼いて作る陶管を使用する。これによって家庭のあらゆる排水は一括処理され、下水道は必要なく、綺麗になった水は農地へそのまま戻す。
○歯磨き
歯磨きは始めにデンタルフロスで歯と歯の間を掃除する。そして次亜塩素酸水(じあえんそさんすい)でうがいをして殺菌・感染予防をしつつ、天然ミネラル歯磨き粉で歯を磨き、最後に次亜塩素酸水で軽くすすぐ。次亜塩素酸水は人体にも無害で、作り方も食塩水に電気を通すだけでシンプルになっている。
次亜塩素酸水(Hypochlorous acid water)
天然ミネラル歯磨き粉の成分
レアメタルフリー電動歯ブラシ
手磨き用の歯ブラシも良いが、虫歯予防に電動歯ブラシを利用する方がより綺麗になる。
貨幣社会では3ヶ月に一回歯医者に行って、定期検診で歯石取りを行うことが薦められている。プラウトヴィレッジでは医療への負担を減らすことも考えると、各家庭で初期の歯石を取る練習を小さい時から学ぶ。硬くて頑固な歯石の場合のみ歯医者に頼る。
○石鹸
石鹸も自然由来のものを作る。
植物性石鹸
木灰(もくばい)石けん
○コンポスト
ゴミの処理については、まずプラウトヴィレッジのような自給自足社会では、スーパーやコンビニがなく、商品を包むビニール袋、ペットボトル、カン、ビンなどの自然分解されない容器や包装のゴミはない。つまり残るのは生ゴミや自然分解される容器だけとなる。そのためプラウトヴィレッジではコンポストを使用する。これは「微生物による有機物の分解・堆肥化」という同じ原理で動いている。
○小型洗濯機と洗浄場所
また、乳児用や介護用の紙オムツは、森林を伐採して作られている。そして使用済みの湿ったオムツを燃やすためにより強い火力が必要となり、その分多くの二酸化炭素が排出される。そのため布オムツが第一選択肢になる。化学繊維のオムツを使用するとかゆみを伴うこともあるので、自然素材を使用する。どこの住居でも乳児や高齢者、要介護者が出入りするので、全ての住居に布オムツの小型洗濯機と洗浄場所を備える。
○住居建設のルール
「全体」
●住民が手作業で組み立てられる設計。
●住居の形は円形で二階建てを基本。
●日本の場合、住居敷地は直径16m、住居の直径は12mを目安。
●二世帯住宅として6人暮らし用、高齢者用の家、一人暮らしやシェアハウスとして6〜8人用を作る。高齢者用は足の不自由な人、車椅子、寝たきりの人がいることを前提にする。
●造りは美しく芸術的にする。住人の内面の安らぎに影響するため。
●窓も扉もあらゆる角は丸みをおびさせることを基本とする。
●住居周辺には太陽熱温水器、蓄熱タンク(暖房用)、貯湯タンク、給水タンク、蓄冷タンク(冷房用・第二選択肢)が設置される。太陽熱温水機は自動車のカーポートの屋根として設置する。
●建設位置の地盤が軟弱でないところに建てる。
素材
●建築素材は早生桐(そうせいぎり)、竹、藁(わら)、土、粘土、石、石灰、水を第一候補とする。ただ石灰は少量にする。
●住宅基礎は石場建(いしばだ)てを第一候補とする。
●コンクリートは基本使用しないが、例外はある。
全体的な造り
●雨水を確実に処理できる屋根を使用し、その庇(ひさし)や窓の水切りを適度な長さにして雨水から壁を守る。
●住居の土台を高くし、地面を飛び跳ねる雨水から壁を守る。
●地面からの湿気が壁内に入らないようにする。
●外断熱で高気密化、高断熱化する。
●窓は複層ガラス(2層か3層)を使用する。
●カビが発生しない作りにする。
●窓の配置は、隣の住居から中が丸見えにならない位置にする。
●各部屋は防音を施す。
●階段幅、扉の大きさ、通路は、グランドピアノなど大きな荷物を運べる広さを検討する。
●電力は、マグネシウム電池、潮流発電、小水力発電、超小型水力発電、小中規模の風力発電、植物発電、砂電池、太陽熱温水機、太陽熱集熱パネルを状況に応じて取り入れる。
●生ゴミはコンポストを使用する。
●風呂場、洗面所、台所などの排水溝は大きくしておき、ゴミが詰まらない設計にする。
●高齢者や乳児の布オムツや排泄後のお尻を簡単に洗える場所を、風呂場付近に設ける。排泄物がつまらない排水溝の設計。
●窓、扉、断熱材、配線、塗装は自然に返せる素材を使用。
自然災害対策
●ゲリラ豪雨の場合、床下浸水、床上浸水(地面より1m)を防ぐ作りにする。
●南海トラフ地震の揺れに対する耐久性。
●巨大地震が起こった場合の家具、内装、照明の在り方とする。
●住居と住居の距離は最低4m開ける。
●海に近い場合、塩害対策を屋外にあるエアコンの室外機や給湯器など設備に施す。
●噴火が起きて太陽が遮られた時、他地域からの地下電線で送電できる設備にする。
●屋根に火山灰が積もって、それを簡単に除去できる作りか。
●屋根に雪が積もった時に手作業で除去できるデザイン。高齢者の落下の心配がない造り。もしくは電熱方式の屋根融雪システムで雪を溶かす設備も検討。
●竜巻や米国のハリケーンにあった場合に、住居は何キロの重さまでなら飛ばされないか確認。飛ばされない工夫を施す。
●台風で周囲の木が折れた場合、どの程度の重みまで耐えれるかの強度を確認する。
●台風で住居から落下、もしくは飛んでいくものがない設計。
●落雷に対する対策をする。
●電源には全てコンセントキャップをつける。火事防止。
○麻(ヘンプ)
麻はレアメタル不要で、丈夫で多用途、かつ環境負荷が低く持続可能な素材なので、プラウトヴィレッジでは、あらゆる分野に利用する。
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