6章② プラウトヴィレッジ : 持続可能な社会プラウトヴィレッジ 第三版

 

○橋

 自治体の橋は10m以上は木造アーチ型と石積みを基本とし、コンクリートは使用しない。

項目

木造アーチ橋

木造水平橋(桁橋)

基礎構造

石積み橋脚+水平圧に耐える基礎が必須

石積み橋脚でOK。負荷は主に垂直方向

橋の構造形式

曲線アーチ状に木を組み、橋脚に圧力を分散

木材をまっすぐ渡すシンプルな構造

耐荷重

高い(圧縮力を分散、車両通行も可)

中〜低(短スパン歩行者向けが主)

スパン(橋の長さ)

中〜長(10〜30m以上でも可能)

短距離(5〜10m程度が現実的)

橋脚の数

少なくて済む(スパンが長い)

多く必要になる(スパンを稼げないため)

必要な技術・施工難度

高い(継手・曲木・力学的計算が必要)

低〜中(直材を組むだけで施工可能)

維持管理

定期点検が必要だが、強度は高く持続性あり

部材交換しやすいが、たわみ・腐朽の発生が早い

景観・文化的価値

高い(伝統構法、象徴的構造)

実用的で素朴、景観的にはやや地味

主な素材

地元木材(ヒノキ・スギなど)+石積み

地元木材(スギ・マツなど)+石積み

施工可能な地形条件

両岸が高低差あり or 岩盤がしっかりしている河川

両岸が安定し、川幅が狭い場所に適する

実例

錦帯橋(山口)、猿橋(山梨)

小川にかかる村道の歩道橋など多数



○推薦選挙(自治体)

 プラウトヴィレッジでは誠実さを基準にリーダーを選ぶ。すると戦争は起きず、不正は行われず、全体の善を考えて物事が決定されていく。反対に不誠実なリーダーになると、争いや腐敗、自己中心的なな判断がなされるようになる。
 この誠実さは人間の自我と密接に関係している。自我とは「私」という考えで、「私」が強いほど不誠実に傾いていく。なぜなら「私」を主張し、自分を優先する傾向が強くなるため。誠実な人はこの「私」を抑えて他者を優先できる。つまり他者の幸せを心から願える良い人ということ。世界から戦争や不正をなくそうと思えば、どの階層のリーダーも誠実な人を選ぶことが要となる。

 次の表は良いリーダーと悪いリーダーの基準。世の中には誠実さがにじみ出ていたり、表面上ではわからないが言動が誠実な人が一定数存在する一方、不誠実さが態度や言動に表れている人も存在する。そしてその両極には当てはまらない中間的な人格傾向の人々が多数を占めている。この中間層の中でも誠実よりの人もいれば、不誠実よりの人もおりグラデーションになっている。この推薦選挙では誠実な人、もしくはかぎりなく誠実に近い人を住民が周囲の住民からリーダーに推薦することで、本当の意味で平和な社会が築かれていく。おおよその目安として、全人口のうち誠実な人が20%、中間層が60%、不誠実な人が20%と認識しておき、推薦選挙では誠実な20%を推薦するように努める。そうすることで、人格者選抜による公平で透明性のある統治が自治体から世界連邦まで行われる。

良いリーダーの基準

良いリーダー

中間層

悪いリーダー

自我が軽い・控えめ


自我が重い・強い

誠実


不誠実

人格者


偽善者

無欲


強欲

他者優先


自己中心的

穏やか


威圧的

非攻撃的


攻撃的

非暴力


暴力

調和的


破壊的

共感的


無神経

許し


仕返し

心が広い


心が狭い

器が大きい


器が小さい

自分に反抗する者を排除せず、対話し、理解しようとする


自分に反抗する者を排除する・首にする・攻撃する

誰に対しても公平に接する


目上に媚び、目下の威張る

思いやり体質


いじめ体質

素直


頑固

正直


嘘つき

透明、正当


不透明、不正

言葉と行動が一致


言葉と行動が不一致

優しい


冷たい

内面は確実に良い人


表面上だけでも立派や良い人に見せる

内面重視


見た目重視

飾らない


見栄っ張り

謙虚


権力や肩書き好き

Win-win


Win-lose

相手を優先


自分を優先

先に与える


先に奪う

みんなのおかげ


自分のおかげ

考えが深い


考えが薄っぺらい

思慮深い


浅はか



 貨幣社会の選挙で選ばれて政治家になると、権力、特権、社会的地位、影響力、名声、高給など、自我が喜ぶ報酬やステータスを得ることができる。つまり自我の強い不誠実な傾向の人が集まりやすい制度となっている。不誠実な人が多くなると選挙の透明性や公正さが損なわれ、不正選挙も増えてくる。
 一つの目安として、国際非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルが公開している2024年の腐敗認識指数がある。これは政府や公共機関の腐敗がどの程度あると感じられているかを、専門家や企業関係者の意見をもとに数値化したもの。この中で100点満点中、世界平均スコアは43点となっている。これは、180か国中、約3分の2の120の国々が50点未満であり、腐敗の問題が依然として深刻であることを示している。1位はデンマークの90点、日本は20位で71点、180位は南スーダンの8点となっている。


 こうした問題が起こる主な理由は次の通り。

・貨幣社会であること。つまり、政治家になることで得られる権力や特権、高収入といった報酬が、自我の強い人々を引き寄せやすく、その立候補者の中から選ばなければならないという構造であること。

・自我の重さ軽さが立候補者の言動を決める決定的要因と、有権者が深く認識していないこと。

・選挙制度自体が候補者の自我の強さを(=人格)を見抜く仕組みになっていないこと。
・有権者側がリーダーを選ぶ際に、こうした自我に関して統一した基準や価値観が欠けていること。


 プラウトヴィレッジではこういったことを解決するため、推薦選挙を行い人格者を選出する。学校でも職場でも、1年ほど同じ組織で同じ人と定期的に顔を合わせていると色々な性格が見えてきて、だいたい周囲の評価は同じになる。つまり人は人の言動を良く見ている。「Aさんは誰に対しても優しくて協力的だ」「B君はおしゃべりでおもしろい人だけど、ちょっとずるい性格です」「C君はいつも友達の陰口を言っているよ」「Dさんは内気だけど周囲に流されず自分のペースで物事を進められるまじめな人です」など。こういった評価は勉強ができるできないに関係なく、13歳でも可能となっている。

 つまり日々の生活を送る中でよく接する自分の住居周辺から1人推薦し、推薦者が多い人物が第5自治会の第5リーダーとなる。そして段階を経て選ばれていった第5リーダーが第1リーダーとなれば、県内の第1リーダーが集まる県議会に参加する。


 また自治体運営に必要なDuty Shareを住民が行うことで、職場のように一緒に作業する人の性格も見えてくる。よって推薦選挙前に「あなたがおすすめする誠実な人」というアンケートを取り、その評価が高かった人物は所属の第5自治会内に知らされ、住民はそれも参考に推薦する。

 自治会の役割は、例えばもし近隣で問題が起これば、住民は第5自治会の第5リーダーや第5副リーダーのもとに相談へ行く。そして必要であれば第5リーダーは近隣住民を集めて対話による解決を図る。それでも解決しないときは一つ上の階層の第4リーダーのもとへいき、より大きな問題として対話によって解決する。こうして問題が起こった時は対話により解決していき、各リーダーは小さな組織で経験を積んで第1リーダーとして成長していく。この場合、答えのない問題に直面した時に、そのリーダーと副リーダーの本当の力量が見えてくる。


 この推薦選挙は自治体から世界連邦まで次の同じルールで行う。


推薦制度のルール

項目

内容

推薦基準

- 第一に誠実な人柄

- その中から実力があり、結果が出せる人を選ぶ

有権者への問いかけ

「あなたの周囲の人で、性格の表も裏も誠実で、みんなのプラスのために行動できる人を推薦してください。」

推薦対象グループ

- A群:女性、レズビアン、女性系・自認

- B群:男性、ゲイ、男性系・自認


※ノンバイナリー、クエスチョニング、Xジェンダー、トランスジェンダー等の方は、性自認に近い群(AまたはB)を自由に選択可能

推薦の順序

- 推薦者は毎回A群、B群から交互に推薦する

- リーダーと副リーダーはA群とB群が交互に担当する

推薦者の条件

- 推薦できるのは10歳以上の住民

- 推薦権には「1年以上の居住歴」が必要

自治体の義務

- 特別な事情がない限り、すべての10歳以上の住民から推薦者を聞く

リーダーの推薦権

- 各リーダーは「担当の組織」+「第5自治会」の2つの単位で推薦権を持つ

推薦選挙の流れ

- 推薦選挙日は世界連邦から選挙が始まり、結果発表後に6大陸、国、県、自治体と一つずつ順番で行われていく。上位組織で欠員が出た場合は、下位組織からリーダーが繰り上がる形で補充される。

- 住居がある円の住人から一人ずつ推薦し合う

- 上位組織のリーダーが出た下位組織は、その都度新しいリーダーを選出する

- 世界連邦から自治体までA群とB群から交互に選出される

- 世界の女性系と男性系の比率がおおよそ半々になるように調整される

選挙の頻度

- 1年に1回、推薦選挙の日を設ける

決定権の継承

- 最終決定権はリーダー

- リーダー不在時は副リーダーが代行

副リーダーの権限

- リーダーの行動が独善的・権力濫用と副リーダーが判断した場合、年に1回、所属する自治会や議会で推薦選挙を実施する権限を持つ。

専門3部門(統括・医食・製造)

- 専門性+誠実さが高い人材を第1自治会で協議し指名

- 第1リーダー が依頼権を持つ

会議への参加原則

- 世界議会・大陸議会・国議会・県議会・第1〜5自治会にはリーダー+副リーダーがペアで参加

リーダー・副リーダーの継続

- 再選されればそのまま役目を維持する

- 能力的に不適任、または強欲な人物は1年で解任される

欠員の補充

①リーダーが解任・引退 → 副リーダーが自動昇格
② 空いたポストは 直下階層 からリーダーまたは副リーダーが繰り上がり

③ 交代のたびに A群/B群を交互 に保つ

長期離脱時の対応

- 怪我・妊娠などで長期離脱 ⇒ 代理を任命

- 復帰後、同ポジションが空けば復帰可

役職復帰のルール

- 一度役職を失ったリーダーも再び推薦されれば第5自治会から参加可能

- これにより世代交代の新陳代謝を促進する


 1年に1回、推薦選挙の日を設ける理由は、住民が選挙に無頓着になるのを防ぐためというのが一つ。もう一つは誠実性を基準に選んでも普段の生活では見えなかった性格もあり、実際に権力や立場的優位性を持った時に本性が見えることがある。その時に1年に1回選挙日が設けられていれば交代を容易に行える。


 推薦権は10歳からで、特別な理由がない限り自治体は必ず全員の推薦者を聞く。これは、子どもでも十分に自分の意思を示せる年齢であり、年齢の節目としてもわかりやすいため設定している。


 推薦権は住民全員にあるが、1年以上そこに住んでいることを条件とする。理由は、引っ越してきたばかりで5町会の住民の多くと会っていないのに、何もわからず推薦するのを避けるため。


 また自治会や議会ではリーダーと副リーダーが行動を共にする。最終決定権はリーダーにあるが、リーダーの独善的行動や権力濫用を防ぐため、常に意思決定の前には副リーダーとしっかり話し合うことが前提となる。それを言葉だけの制度に終わらせないために、副リーダーは年に一回、所属自治会や議会で推薦選挙を行える権利を持ち、それでリーダーを継続させるかどうかを決定する。その詳細をまとめたのが下記の表。

リーダーと副リーダーのルール

項目

内容

ポイント

基本条件

リーダーが意思決定をする前は副リーダーと十分に話し合い、両者が納得することを目指す。

話し合いが前提。

最終決定権

リーダーの意見を聞いても副リーダーが納得できず、副リーダーが自分の意見だけを主張するとリーダーの意思決定が遅れ、組織運営に支障がでる。そのため、最終決定権はリーダーが持つ。

組織運営の停滞を防ぐ。

理想的プロセス

1. しっかり議論し納得を目指す 。
2. 納得できなくても議論した認識を持つ。
3. 継続的にこのプロセスを実施。

しっかり話し合うことが信頼構築の鍵。

見極めのポイント

誠実なリーダー:副リーダーの意見を尊重し、十分に議論でき、意見を聞く耳も持つ。住民に都合が悪い判断でも、必要なことはきっちりと説明できる。


不誠実なリーダー:独善的になり、副リーダーの意見を軽視する。またやましい気持ちがあると、副リーダーや住民への説明をおろそかにし、違和感がある。

誠実なリーダーの場合、例えメンバーの意見が採用されなくても、話を聞いてくれたということでメンバーの中に信頼感が生まれる。

副リーダーの権限

副リーダーがリーダーの権力濫用だと継続的に判断した場合、自治会や議会のメンバーと話し合い、リーダーの言動をチェックする。そして年に一回、推薦選挙のやり直しを行える。

権力濫用を早期に防ぐ。

理解力の差による誤解

副リーダーの理解力が低い場合、リーダーの意図を誤解し、独善的・権力濫用と見なす可能性はある。

実際は濫用でなくても誤認リスク。自治会のメンバーはそこを踏まえ、リーダーの言動をチェックする必要がある。




○推薦選挙(県、国、六大陸、世界連邦)


 推薦選挙のルールは自治体と同じ。自治体内で誠実な人をリーダーに選ぶことが全ての土台になる。自治体の第1リーダーは次に県議会に参加する。
 2000年の日本には都道府県が47個あったので、県リーダーと副リーダーがそれぞれ47人ずついることになる。その計94人の中から国議会の推薦選挙で日本の国家リーダーと国家副リーダーを選び、六大陸の大陸議会へ参加する。


 2000年の段階で世界には約200の国が存在した。つまり国家リーダーと国家副リーダーが200人ずつ存在する。その中でまず国家リーダーは自分の国がある六大陸の中で推薦選挙を行い、大陸リーダーと大陸副リーダーを決定し、その2人が世界連邦の世界議会に参加する。六大陸とは、①オセアニア、②アジア、③ヨーロッパ、④アフリカ、⑤北アメリカ、⑥南アメリカのこと。南極には永住している人間がいないため除外とする。


 つまり六大陸から2名ずつ計12人の大陸リーダーや大陸副リーダーが、世界連邦の世界議会へ参加する。その後、世界議会の中でも推薦選挙を行い、世界リーダーと世界副リーダーを決定する。ここでもA群とB群を交互に選出する。


 現時点での世界連邦の運営組織は統括、医食、製造の3つ。この組織数がどこまで増えるかは未定だが、この形で世界連邦が開始した場合、統括、医食、製造のリーダーと副リーダーも自治体や県議会と同じく、誠実で実力がある人物は誰かを世界議会で話し合って決め、最終的に世界リーダーが依頼する権利を持つ。


 こうして第5自治会から世界連邦の世界議会まで、運営と推薦選挙の仕組みは全て同じとなる。住民の推薦による第5自治会、第4自治会、第3自治会、第2自治会、第1自治会、県議会、国議会、大陸議会、世界議会の9段階の推薦選挙を経て、世界連邦の世界リーダーとなる。


 貨幣社会の政治制度では、立法、司法、行政の三権分立などで権力を分散させることが多いが、世界連邦では分散させない。ここで理解するべきことは、世界連邦に参加する大陸リーダーなどは、自治体から選ばれてきた誠実な人格者であるということ。つまり人格者の集まりが世界連邦であり、人格者は権力を乱用しない。推薦する住民も権力を乱用しそうな人を推薦しないよう、気をつける必要がある。
 そして多くの問題を自治体レベルで解決することが前提となるので、世界連邦で解決する問題は限られたものになる。



○Duty Share制度

 Duty(デューティ)は社会的・道徳的に「果たすべき役割」というニュアンスで、Share(シェア)は共有するという意味。自治体運営は住民が行うため、リーダー職、医療、食料、住居、水・電気などのインフラ、教育、衣服、治安維持などの生活基盤は、住民の交代制で運営を行う必要がでてくる。

 住民の中には積極的にまじめに参加する人もいれば、全く行わない人も出てくるので自由参加にはせず、公平に同じ時間の参加となるよう参加時間の記録をつけながら行う。目安は現時点では1日2時間、週8時間程度。

 内容は次のようなもの。

組織

業種

具体的な作業例

統括

自治体のリーダー職

世界連邦から自治体までのあらゆる階層のリーダー職。自治体のリーダー職だけ他の分野のリーダーと兼任可能。


教育支援

子ども学習サポート、読み聞かせ、ワークショップ講師


共助サービス

消防、イベント企画・運営手伝い、文化継承、来訪者ガイド


IT・管理

コミュニティネットワーク保守、PCトラブル対応、エネルギー/水使用量データ集計

医食

医療

治療、手術、問診


福祉

介護、認知症のケア、更生施設管理


農・環境

共同菜園の草取り・収穫、堆肥づくり、竹・藁資材の裁断と束ね、植林

製造

製造ユニット

機材の調整など


住居建築

住居建築や修繕


道路・土木

道路の整備、雨水排水溝の掘り直し


生活インフラ

給水設備点検・小水力/風力発電の清掃、配管・配線の簡易チェック


メンテナンス

コミュニティセンターの修繕、ペンキ塗り、工具庫の整理


リサイクル

資源分別ステーション管理、コンポスト管理


 これらは生活基盤が対象なので、音楽など芸術やスポーツチームの指導などは文化的な活動としてDuty Shareの対象にはならない。


 またDuty Shareの各業種ごとに推薦選挙を行い、誠実な人物をリーダーと副リーダーに任命する。Duty Shareの推薦選挙のルールは次の通り。

Duty Shareの推薦選挙のルール

項目

内容

推薦選挙の対象

Duty Shareの各業種ごと。

グループ分けの基本ルール

毎回一緒に作業するグループを基本とする。

グループ分けの変動

担当曜日でのグループ分け。
住んでいる地域でのグループ分け。
※業種に応じて変動。

グループ分けの目的

メンバーの日常の言動や誠実性を把握するため。

階層設定

各業種の人数に応じて階層の段階数を設定。自治体のリーダーなら第5〜第1の5段階。

リーダー選出

選ばれたリーダーは自治体リーダーと同様に推薦選挙を繰り返す。

リーダーの最終到達

世界連邦の総括、医食、製造のリーダーまで続く。

兼任ルール

各業種リーダーは自治体〜世界連邦のリーダー・副リーダーを兼任可能。
理由は方向性提示の役割が中心となるため。

兼任の自由度

負担の大きさに応じて、兼任を辞退することも本人の意思で可能。


 プラウトヴィレッジでは推薦選挙を10歳からできるようになる。それにあわせてDuty Shareも10歳から簡単なものを始めるようにする。Duty Shareは自治体運営に必要な職業体験の側面もあるので、10歳からはまず幅広く経験し、運営に必要な全体像を理解する機会になる。


○医療

 2025年の厚生労働省の調査では、日本の病院数は8022件、一般診療所は10万5359件、歯科診療所は6万5793件となっている。

 この年の日本の人口は1億2330万人なので、病院は1万5370人に1件、一般診療所は1170人に1件、歯科診療所は1874人に1件となる。

 最大6万人ほどのプラウトヴィレッジに当てはめると病院は4件、一般診療所は51件、歯科診療所は32件となる。ただこれは日本の貨幣社会の平均的数字を当てはめた数字なので、予防医療を強化するプラウトヴィレッジでの数はもっと少なくなる。


出典:

医療施設動態調査(令和7年5月末概数) , 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m25/dl/is2505.pdf


 病院と診療所の基本的な違いは、次の通りとなっている。

病院と診療所の比較

項目

病院

診療所

ベッド数

20床以上

0〜19床

診療科

複数科あり

院長の専門科中心(1〜2科)

検査機器

CT・MRI・内視鏡・手術室など充実

レントゲン・心電図・簡易検査が多い

医師数

複数名(当直医もいる)

1〜数名(院長が主治医)

看護師数

24時間体制

日中のみ(無床なら少数)

役割

入院治療、手術、救急、重症対応

初期診療、慢性疾患管理、紹介窓口


 CT、MRI、超音波、人工呼吸器、ペースメーカーなど、多くの機器がレアメタルを必要としている。ただレアメタルは供給制限と枯渇に向かっている。つまり枯渇に向かうほど、これらの機器の製造コストが増加する。すると高額機器を導入できない医療機関が増加し、地域格差が拡大する。そして患者の大病院集中により、混雑・待機時間の増加が起こり、地方では検査を受けるため遠距離移動が必要になる。さらに患者のCT・MRI検査などの自己負担額は増加する。技術革新と制度改革によって上昇幅は抑えられる可能性もあるが、レアメタルの供給制限により、「価格が上がっても買わざるをえない」状況となるため、全体的に負担額が増加する。

 ただプラウトヴィレッジ単体では対応困難で、世界・国家レベルの連携が必須な医療分野は次の通り。これは世界連邦で対応策を考えることになる。

分類

具体例

必要な外部連携

高度医療・特殊治療

がん高度治療(放射線・化学療法)、心臓手術、人工臓器移植

高度医療施設・専門医・手術チームの集中化

ワクチン・医薬品製造

ワクチン、抗生物質、希少薬

製造施設、原料供給、品質管理、流通ネットワーク

高額医療機器

MRI、CT、人工呼吸器、ペースメーカー

部品供給、メンテナンス技術、メーカー支援

疫病・感染症対策

新興感染症、パンデミック対応

情報共有、研究、治療薬・ワクチン供給、監視体制

高度検査・専門診断

遺伝子検査、病理診断、希少疾患診断

専門人材、検査機器、データベース、技術支援


 1800年頃の産業革命以降、世界の平均寿命は伸び、乳幼児死亡率は低下している。その要因は次のものがある。
 清潔な水、トイレや下水の清潔な処理、ワクチンと予防接種、安全な分娩環境、母子の保健教育、多様な作物とバランス食、運動、定期的な健康診断と早期治療。
 これらを踏まえプラウトヴィレッジでは、次の3つが要になる。

⚫︎技術革新の推進:
 世界連邦など世界的ネットワークの中で、レアメタルを使わない新しい診断・治療技術の開発を進める。

⚫︎予防医療の徹底:
 清潔な衛生環境と栄養、予防接種、運動、分娩・母子ケア、健康教育、定期診断で乳幼児の健康と全住民の寿命を維持する。

⚫︎需要削減:
 予防医療重視により治療機器の需要を減少させる。

 これらを踏まえつつ自治体一つに病院一つを基本とし、必要に応じて診療所と歯科診療所の数を設定していく。そして高度医療機器やワクチンなどを除き、医療に必要な基本的な用具や植物由来資源の備品は、自治体内で自給自足していく。


○消防

 プラウトヴィレッジでは住居が密集することはなく、住居は土の壁なので燃えない。よって火災時に住居から住居へ火が燃え移る可能性は少ないが、周辺の樹木へは燃え移る可能性がある。火災が起きれば自治体の消防車が出動し、規模が大きければ近隣の自治体からも応援が駆けつける。ただ初期消火活動として住民自らが各家庭に常備されてある小型消化ポンプを使用して消火活動を行う。これにより周辺の木々へ火が燃え移ることが早期に予想された場合に、それらの木々に先に放水して被害を最小限に抑える。住民による消火訓練も、医食部が中心となって自治体で年1回ほど計画する。

 ハイブリッド消防ユニット

(足踏み式 vs 電力式 × 地下式消火栓 × 上水道+雨水タンクの二系統接続)

項目

足踏みポンプ(機械式)

電力ポンプ(レアメタル最小化設計)

モーター方式

人力(踏み込み)

鉄芯+銅線ブラシ付きモーターまたは誘導モーター

電力依存

× 不要

〇 自立電源(Mg電池・ソーラーなど)または外部電源

放水能力

〇 約0.3MPa/15〜20L/分/放水距離約5〜7メートル

◎ 約0.5MPa/30〜40L/分(設計次第)/放水距離約8〜12メートル

操作人数

〇 1人で操作可

◎ 1人で操作可(スイッチ操作)

持続時間

◎ 人力が続く限り無制限

〇 電源容量に依存(30〜60分程度)

騒音・静音性

◎ 静か(機械式)

〇 モーター音あり(種類により静音)

レアメタル依存度

× ほぼゼロ

△ 極力低減設計も微量は必須(ブラシ摩耗部品や制御基板含む)

住民整備性

◎ 高い(単純構造・容易修理)

△ 中程度(電気部品管理・部品交換必要)

水源接続

〇 二系統(上水道+雨水タンク)切替可

〇 同左

消火栓形式

〇 地下式マンホール型

〇 同左

格納方法

地下収納または屋外格納箱(ホース25m一体)

同左

運用コスト

◎ ほぼメンテのみ低コスト

△ 電池や制御部品交換で中程度

故障リスク

◎ 非常に低い

△ 電気系トラブルリスクあり

景観調和

◎ 地下設置で良好

◎ 同左

メンテナンス頻度

低(定期点検・清掃のみ)

中(電池・ブラシ交換・基板確認)

導入推奨度

〇 最高(持続可能性最重視時)

〇 高(性能重視時)

備考

レアメタル完全ゼロのため、持続可能性最高。出力は控えめ。

微量レアメタルは不可避。長寿命化・リサイクル体制必須。レアメタル使用量が多い場合は、足踏みのみか別案を検討。

消火用雨水タンク容量とサイズ目安表

容量(L)

放水時間の目安(20L/分想定)

用途目安

タンクサイズの参考(概算)

備考

500L

約25分

一般家庭の初期消火用

約0.8m × 0.8m × 0.8m (立方体換算)

設置場所の形状によって変動あり

1,000L

約50分

複数戸共同使用や延焼防止

約1.0m × 1.0m × 1.0m (立方体換算)

横長や深型など形状変更可能


○災害時の救助と復興

 2020年に世界中で広まったコロナウイルスでは、感染を防ぐため自宅待機が求められた。そのため企業も個人も、お金にまつわる問題に悩まされた。プラウトヴィレッジでは自宅や周辺で食物を育てているので食べるものに困らず、家賃を支払う必要もないので、感染者がいなくなるまで全員が自宅待機することができる。学生の勉強の遅れの問題も、プラウトヴィレッジには指導カリキュラム、学歴、就職という概念がなく、勉強は独自に進めていくことが前提となっている。そのため勉強の遅れという概念もない。


 コロナウイルスのような感染症が発生した場合の手順としては、まず発生した自治体と周辺自治体を早期に封鎖する。場合によっては全国的に自治体間で人の移動を禁止する。そして自治体内で全住民の検査を行う。陽性だった人は、自宅待機か空いている土地に作られる一時的な隔離住居に移動し、治療を受ける。もし自治体内の大部分が感染していれば、自治体そのものを封鎖し、感染していない人が別の自治体へ移住する。こうして全員が陰性と判断された自治体同士は、再び移動が自由となる。こうしてワクチンを打たずに感染者ゼロを目指す。


 100年単位で歴史を振り返ると感染症は古代から発生し続けており、今後も発生する。そのため人口が分散していた方が、検査を手分けして迅速に行える。都市のように大人数が集中していると医師と設備の数が足りず、医療崩壊を起こす。


 また、地震、火山噴火、地すべり、台風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、津波などの自然災害のどれが起きようとも、基本的な対応策は同じ。自然災害の影響が及ぶ範囲は限定的であり、災害の影響が及んでいない周辺自治体が避難場所として被災者を受け入れる。


 災害が起こりまず困ることは被災者の住む場所、トイレ、食料だが、周辺地域の自治体や住民が避難場所として宿泊施設や自宅を提供し、食べるものも提供する。次にその自治体の統括部がその避難者のリストをまとめ、安否の確認がとれるよう手配する。


 次に復興については、破壊される前の状態を作り出せば良いだけであり、そのために周辺地域の住民が中心となって復興を行う。貨幣社会では復興する際の大きな問題として資金面があり、復興後も経済的に成り立つのかが問題となって復興が遅くなる。しかし貨幣がないプラウトヴィレッジではそういった問題は起こらず、地元の資源と住民がいれば復興はすぐに行われる。


 そして街が完成すれば再び住民は戻っていく。ただ噴火、津波、洪水などの自然災害の歴史を何百年単位で見ていくと、同じような場所で同じような災害が起こっていることがある。つまり復興する場合も、同じ災害が起こると予測されるのであれば、同じ場所に街を作らない必要性が出てくる。地域の歴史を慎重に検討し、自分達の子孫の世代のことも考えた上で街作りを行わなければならない。


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