○介護施設
貨幣社会では仕事が忙しく、時間も精神的にも余裕がないという人もいる。金銭面の問題や受け入れ先の有無などで、介護が必要な高齢者の在宅介護を余儀なくされる家庭もある。
プラウトヴィレッジではこの問題について、まず全住民が自由な時間があるので、世話をする余裕があるということが一点。さらに自治体の仕組みとして、認知症と診断された住民同士が一緒に住む介護住居を自治体内に設ける。そこには庭に草木で作った柵のような境界を設け、その敷地内なら自由に行動できるようにする。そうして徘徊で迷子になることを防ぐ。
その専用住居からの外出は家族や友人が一緒であれば自由で、出入りもいつでも可能。日中は家族と共に自宅で過ごし、夜間は専用住居に預けておくということも可能。
また人が集まる自治体の中心部にこの施設を建てておけば、住民も何かの活動で中心部に行った時に介護住居も訪れやすくなる。
またトイレ以外の場所で排泄を行うこともあるので、その専用住居の床や壁は拭き掃除が簡単なものにする。そして同じく危険となる包丁などの道具は置いてはおかない。この介護住居は自治体の医食部が管理し、家族や住民が交代制で運営を行っていく。
また日本では一般的に馴染みがないものだが、福祉には身体障がい者の性の介護も含まれる。どんな重い障がい者でも性的欲求があり、それを解消すべくセックスボランティアが住まいへ伺い介助を行う。こういったことも福祉の一環として位置づけられる。
○犯罪一覧表 (迷惑・加害行為・処分内容)
人間に自我がある以上、「私」を優先する気持ちから人間関係のトラブルはプラウトヴィレッジでも続く。トラブルにも人に迷惑をかける程度のものから、人を傷つけるものまであり、内容によって処分内容が異なる。カテゴリ6の迷惑行為なら生活制限措置、カテゴリ5以上は更生施設扱いとなる。深刻な問題になるほど経験値のあるリーダーが担当し、慎重に議論され処分が決定される。下記がその一覧表。
犯罪一覧表 (迷惑・加害行為・処分内容)
補足
⚫︎処分内容は各担当リーダーが決定するが、犯罪と認定し処分を決定するためには、被害者側が証人や証拠を準備しなければならない。
⚫︎加害者と話し合いに行く時はリーダーと副リーダー、そして住民全員も参加すること。ただリーダーの判断で少人数でも良い。
⚫︎第1リーダーが加害行為を行った場合は、そのカテゴリに対応する出身自治会のリーダーが処分を決定する。
⚫︎第1リーダーがカテゴリ1の加害行為を行った場合は、第1副リーダーが処分決定を行う。第1リーダーと第1副リーダーが加害者なら、第1自治会の第2リーダーの中から推薦でリーダーを決め、そのリーダーが決定する。
○地下資源一覧表(禁止度順)
分類表 (迷惑・加害行為・処分内容)のカテゴリ3にある「使用禁止の地下資源の無許可での採取・保管・使用・移動」の内容は次の通り。
地下資源一覧表(禁止度順)
○生活制限措置
レベル1の生活制限措置の内容は下記の通り。原則は「改善の機会を与えながら、段階的に制限を加える」こと。
生活制限措置
ポイント
●個人IDと電気・水道の一括管理設備で制限を加える。
●段階的に厳しさを上げていくことで、改善のチャンスを何度も用意する。
●命に関わる部分は最終段階であり、最大限の慎重さをもって運用。
●例外措置の設定が不可欠。
制限があることのメリット
●話し合いの負担が軽減される。
明確なルールや段階的制限があれば、感情論だけでなく「決まった手順」があるから議論がスムーズ。高圧的な人、暴力的な人が相手の場合、住民にとって毎回話し合いや注意しに行くのは負担になる。そのため制限を決めておくと、警告の次は制限となるので、ネガティブな影響を受ける負担が軽減される。
●公平感が生まれる
誰にでも同じ基準が適用されるので、恨みや不公平感が減る。
●感情的対立起こりにくい
誰かのさじ加減ではなく、ルールに基づく対応なので感情的対立が和らぐ。
●抑止力になる
「こういうルールがあるなら、わざわざ反抗したりトラブル起こす意味がない」と思わせる効果。
注意したいこと
●制限や罰則が恐怖支配にならないようにする。そのために自我の軽い誠実なリーダーを選ぶ。自我の重い独裁者気質を選んではならない。
●可能な限り、対話や支援で解決する努力を続けること。
対象者
●対話不能な自己中心者
話し合える人間性の人なら、そこで解決を目指す。ただルールを破る上に自己主張ばかりで話に
ならない相手の場合、例えば怒鳴ってきたり、意味不明な論理で会話が成立しないということがある。
住民も、こういうことで日々の時間を使うことを嫌がる人が出てくるケース。
問題人物の同居人について
例えば住民A男さんが暴力的で会話にならなかったとする。このA男さんは妻、子供、両親も一緒に住んでいたとする。第3段階までの移動制限はA男さんだけの適用ですむが、第4段階の電力や水の供給制限からは、住居そのものに対してとなり、制限対象者と同じ家に同居している人全員ということになる。家族に期待するのは、A男さんと話して協力するよう促すこととなる。もしくはA男さん以外は一時的に転居する。
自治体で対応できない武装勢力が現れた場合
電気、水道の一括管理のシステムは自治体から県議会、国議会、大陸議会、世界議会と繋がっていく。つまり自治体で対応ができない規模の問題、例えば武装勢力がでてきた場合などは、より大きな階層の議会で話し合われ、制限措置が検討される。例えばAという自治体での暴力行為が大きくなれば、周辺のB、C、D、E、Fといった自治体の脅威ともなるため、それらが県議会で話し合い、県リーダーが最終決定をする。同様にそれが世界議会まで続く。
仮にAという自治体の電力設備全体を止める必要がでた場合は事前に住民に通達し、他の自治体が住む場所を用意し、受け入れる体制を作る。
○更生施設
プラウトヴィレッジでは刑務所ではなく、再発防止のための更生施設を設ける。犯罪数にもよるが、件数が少なければ周辺自治体と共同運営で1つを作る。運営管理は住民の当番制。
ここに入って一定期間出れないという意味では罰ともとれるが、一番の目的は、悪友がいればその関係を断つ。特に何かをするわけでもなく長い時間、1人になって孤独や静寂の中で自分の過去・弱さ・思い込みに向き合うことで、深層の変化が起こることを期待する。ただ孤立し過ぎないように見守りや共感的な対話、傾聴、運動などは地域によって決定していく。
地域社会全体で考えると、犯罪そのものをなくすことが全体の平和につながるため、一定期間加害者を隔離しながら治療することを目的とする。
○薬物使用者への対応
貨幣がないプラウトヴィレッジでは、利益目的で薬物を売る人はいなくなる。ただそれでも何かの機会で始めた大麻、コカイン、ヘロイン、覚醒剤などで、薬物依存症に陥る人が出てくる可能性はある。
日本の厚生労働省の調べでは、覚醒剤使用者が逮捕後、再び使用する率は67.7%。薬物使用者は逮捕後、犯罪者として扱われることから社会と孤立することもあり、負い目もあって助けを求められず、依存症のため再び使用するという悪循環に陥ることがある。
罰によって薬物をやめさせるのではなく、使用者と一緒になって健康への被害を減らすことに着目したハームリダクションを導入している国が、カナダ、スイス、ポルトガルなど80カ国以上ある。
例えばカナダの例では、薬物使用者に薬物を使用する小部屋を用意し、ハームリダクション用品を渡す。この中には薬物を安全に使う道具が入っている。止血帯、蒸留水、薬物を温めて溶かす器具、注射器などで、すべて消毒済みの清潔なもの。この部屋で利用者は、自分で手に入れた薬物を持ち込んで使用する。ここでは警察も逮捕することができない。こうして利用者と支援スタッフがつながる場所を設け、困りごとなどを聞き、必要な支援を継続していく。清潔な道具を渡すことで薬物使用者が注射器を使い回すことがなくなり、エイズなど感染拡大を抑える利点もある。
カナダでは薬物の過剰摂取による死亡者が2年間で35%減少し、この断薬治療につながる人が1年で30%以上増えるなどの成果もでている。
ただプラウトヴィレッジでは、薬物使用者の状態によって次のように対応を変える。
薬物使用者への対応
○死刑制度について
プラウトヴィレッジでは、自我に振り回されないことが人間の内面の目的と定めている。自我は過去の記憶とつながっており、その記憶が今の言動を決める。殺人など犯罪を犯す人がいた場合、その行動や動機も過去の記憶が関係している。つまり無心になって自我に振り回されないということは、無意識におこる過去の記憶からくるネガティブな感情に流されないということであり、犯罪など誤った行動がなくなっていく道になる。つまり殺人を犯した者に対し死刑で人生を終わらせるというのは、自我との距離感を学ぶ機会を奪うことになる。そういった意味で、死刑というのはプラウトヴィレッジでは用いない。死刑にするよりも更生施設で自己の内面と向き合う。
○安楽死、自発的飲食中止について
安楽死には3つの種類がある。
1、積極的安楽死は、患者の明確な意思と耐えがたい苦痛、回復の見込みがない場合に、医師が直接致死薬を投与する方法。
2、自殺幇助は同じ条件で、医師が致死薬を処方し、患者本人が自ら服用する。
3、消極的安楽死は、患者の意思に基づき、回復の見込みがない終末期に延命治療をやめて死期を早める方法。
安楽死を望む人の理由には、耐え難い身体的痛みや苦痛の継続、身体的機能低下によって自立できない状態や日常生活の著しい制限、絶望感や孤独感などの精神的苦痛などがある。
安楽死や自殺など自らを死に追いやる行為については、その国の宗教とも関係しており、基本的に禁止されている。ただ積極的安楽死は約3〜4カ国、自殺幇助は約5〜7カ国、消極的安楽死は50カ国以上で認められている。
安楽死を合法化すると、それを安易に利用する人、社会的圧力で強制的に利用させられる人が増えると懸念する声もある。
プラウトヴィレッジでは人間に自我があるため苦しむので、自我に振り回されないことを推奨している。その自我との距離感を学ぶ機会として、精神的な苦痛から逃れるための安楽死や自殺を進めることはしない。
ただ身体的激痛に対しての治療法がなければ、患者にとっては拷問であり地獄でもある。そういった意味で安楽死ではなく、自発的飲食中止(VSED)という選択肢を残しておく。
これは食べることを止めて死を迎える方法。オランダでは1999〜2003年に自発的飲食中止で年間平均で約2800人が亡くなったという調査がある。日本でも終末期の緩和医療に携わる医師の約3割が、自発的飲食中止で死を早めようとする患者を診たことがあるという調査結果もある。自発的飲食中止は本人が食べるか食べないかを選ぶ行為であり、周囲が無理矢理食べさせることはできない。
自発的飲食中止の場合、水分摂取をほぼゼロにしてからでも、死亡まで通常1週間〜10日ほど経過する。医師によって適切なサポートがあれば、平穏に死んでいける方法と述べている医師もいる。
インドのジャイナ教でも古くから同様の行為が行われており、サッレーカナーという。これは徐々に食事の量を減らしていき、最終的に断食による死を選ぶ。これが認められるのは、末期の患者で、飢饉など食糧が得られないときや、老齢で機能を喪失している場合、病気で回復の見込みがない場合とされており、僧侶の監督下で行われる。これは自殺のような衝動的行為とは区別されている。
プラウトヴィレッジでは自発的飲食中止も安楽死も自殺も推奨はしない。ただどうしても自発的飲食中止をする人は、家族や友人と話し合って納得した上で行う。
○住所の設定案
プラウトヴィレッジの住所の設定案。最も北にある直径1333mの円を1番とし、そこから時計回りに2~6番まで番号を割振り、7番は真ん中の直径1333mの円に割振る。同じ要領で444mの円、148mの円、49mの円にも1~7番まで割り振っていく。すると住所はPV11111からPV77777の間のどれかになる。フラワーオブライフのプラウトヴィレッジの場合は、PV11111が真北、PV77777は自治体の中心部分の広場になる。もし縦長のプラウトヴィレッジの場合は、同じ要領で北から南へ番号を割り振り、横長の場合は東から西に番号を割振る。住所は「六大州名、国名、県名、自治体名、PV54123」となる。
○世界共通の基準
資源や物資の輸出入や国家間でお金が行き来する貨幣社会で、資源枯渇、戦争、気候変動、貧困、政治腐敗、プラスチックのゴミ問題などの複雑な社会課題を、一国だけで解決することは困難となっている。各国が自国の利益を優先し、生き残りをかけて競争する仕組みの中では協力が難しく、対立構造が生まれてしまう。
プラウトヴィレッジは競争して利益を追わなくても生活していける仕組み。そのため、持続可能で平和な社会を実現するために、すべての国や人が守るべき共通の基準を定める必要がある。次の内容はその基準。
「自治体の運営ルール」
●自治体の位置は津波を想定して海岸から7km以上離す。
●自治体での大小の決定は、それを世界100億人が行えば持続可能かどうかを基準に考える。
●地上の自然は、どこまでも100%に近い状態を維持する。
●枯渇していくだけの資源は使わない。栽培か100%再利用できる素材のみを使う。
●河川はコンクリートの堤防建設はできるだけ避け、自然のままの景観を維持する。
●橋は木造アーチ橋と石積みを基本とする。
●景観を壊さぬよう周囲の樹木よりも高い建物は立てないようにする。
●海岸から内陸7kmや山間部は、その周辺の自治体が管理する。もしくは複数の自治体で共同管理する。
●大型施設の建設は周辺自治体とも話し合い、海岸から内陸7kmの間の土地に建設することを検討する。
●自治体単位で判断しづらい事案(大型施設、ロケット、人工衛星、科学的な巨大実験など)は県議会、国議会と上位の組織へ持ち込んで話し合う。
●川沿いに住居は建てず、過去の洪水データを調べ、川岸から数十m離して建設する。
●川沿いは河川敷公園、グラウンド、ため池(養殖含む)、遊水地などを配置する。
●山崩れ・斜面崩壊を考慮し、予測される土砂の到達位置以上に離して建設する。
例えば、斜面の傾斜が30度以上の所、斜面の途中で傾斜が突然急になるところがある高さ5m以上の斜面、谷型(凹型)の斜面、上方に広い緩傾斜地(かんけいしゃち)がある斜面など。
●集中豪雨が2日続くと、山の斜面にはさまれたせまい場所は濁流が押し寄せることを前提とする。
●住居や道路の配置はフラワーオブライフと六角格子を基本とする。
●道路は車椅子、ベビーカー、目の不自由な人の平坦な道を基本とする。アスファルトやコンクリートは極力使用しない。
●階段を作る場所には車椅子用にスロープも設置する。
●山や崖など斜面崩壊の影響を受けやすい麓には作るとしても畑などにし、道路と住居は斜面から離して作る。
●雨水を溜め、それを農地へ使うための効率的な用水路を設置する。今後の温暖化と雨が降らず猛暑日が続いたときの対策のために。
●信号は作らず、交差点は環状交差点(ラウンドアバウト)にする。
●トイレや更衣室は男女+多目的(車椅子など)+ジェンダーフリーを設ける。
●住居周辺に地下式消火栓を設置する。住居まで届く距離のホースを埋設する。
●農業用の支柱や柵などは主に竹を使う。網は竹こまいなど。
●自治体の景観は美しくデザインする。そこに行きたくなるような、いるだけで明るい気分になるような。
●夫婦別姓は可能で、子供の名字をどうするかも家族などで決める。名前も自由に変えられるが履歴は残る。
●全ての人がどこかのプラウトヴィレッジに所属し、個人IDを作ることでその自治体の資源が分配される。
「自治会の対応内容」
●いじめ
発見者はどの自治会でも良いので口頭やメールで報告する。リーダーは加害者の所属自治会へ報告し、その自治会が対応を検討する。
案として塾やスポーツチームなどグループ活動を行う際、代表者は始めに一つのルールを参加者に伝えておく。それは、グループ内でいじめが起これば、その加害者は出入り禁止になるか、グループから離して個別の場所で活動することになるということ。始めに伝えておけば、代表者と加害者が仲が良くても、ルール上だからと言って伝えやすくなる。この対策は子供だけでなく大人のグループでも同じ。
●幼児虐待
これもいじめと同じで発見者はどの自治会でも良いので報告し、加害者の所属自治会が対応を検討する。幼児虐待は、子どもの脳の発達、感情の制御、人間関係の築き方に深刻な影響を与え、将来の暴力性や反社会的行動につながる土壌を作ってしまうので、早期に対応する。
●その他の犯罪行為
犯罪行為を発見した場合も発見者は自治会へ報告し、加害者の所属自治会が対応を検討する。
○戦争をなくす流れ
戦争には軍隊が必要だが、兵士が上官の命令に従う理由は、組織に居続けることで得られる安全・生活・利益の保障があるため。これは人間の様々な組織に当てはまる。
メンバーがリーダーや組織の命令に従う理由
独裁国家や軍事国家でも安全・生活・利益の何かしらの保障があるため、兵士は上官の命令を聞く。それによって大統領は警察や兵士を使い、恐怖で国民を従わせることができる。しかし脱貨幣社会であるプラウトヴィレッジが世界中に広がると、警察や軍隊も維持することが難しくなってくる。
これは世界から戦争をなくし、軍隊や武器もなくなっていくことにつながる。民主主義国家では国民の意思で軍備を縮小できるが、情報統制が行われていることもある独裁国家や軍事国家では、次のような流れになる。
独裁国家の場合
国家による情報統制を行っても完全には封鎖できず、比較による覚醒→不満→離反・内部反乱という流れが避けにくくなる。例えば海外からの情報統制を行っている独裁国家の場合は、その国出身で日本やアメリカに住む人がプラウトヴィレッジを体験し、それを独裁国家に住む家族や友人に伝えることで伝わっていく。
こういった流れが起こるのは、プラウトヴィレッジに住むメリットがあるため。
プラウトヴィレッジに住むメリット
独裁国家や軍事国家がある貨幣社会と比較すると、脱貨幣社会は軍隊を維持するのが難しい社会構造となる。
つまりプラウトヴィレッジが広がった世界では軍隊を持つことが難しく、仮に軍事国家が軍事組織が現れても、その征服地域を広げることが困難な構造となっている。
こうして非暴力で社会を変え、戦争中の国の軍事力も低下するよう働きかける。また独裁国家や軍事国家からプラウトヴィレッジに対して攻撃されるリスクを考えて、防衛のための軍事力の廃止は最後に行う。また独裁国家内では弾圧や攻撃のリスクが高くなるので、その周辺国でプラウトヴィレッジが広がった後に支援を行う。
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