6章③ プラウトヴィレッジ : 持続可能な社会プラウトヴィレッジ 第三版

○介護施設


 貨幣社会では仕事が忙しく、時間も精神的にも余裕がないという人もいる。金銭面の問題や受け入れ先の有無などで、介護が必要な高齢者の在宅介護を余儀なくされる家庭もある。

 プラウトヴィレッジではこの問題について、まず全住民が自由な時間があるので、世話をする余裕があるということが一点。さらに自治体の仕組みとして、認知症と診断された住民同士が一緒に住む介護住居を自治体内に設ける。そこには庭に草木で作った柵のような境界を設け、その敷地内なら自由に行動できるようにする。そうして徘徊で迷子になることを防ぐ。
 その専用住居からの外出は家族や友人が一緒であれば自由で、出入りもいつでも可能。日中は家族と共に自宅で過ごし、夜間は専用住居に預けておくということも可能。
 また人が集まる自治体の中心部にこの施設を建てておけば、住民も何かの活動で中心部に行った時に介護住居も訪れやすくなる。
 またトイレ以外の場所で排泄を行うこともあるので、その専用住居の床や壁は拭き掃除が簡単なものにする。そして同じく危険となる包丁などの道具は置いてはおかない。この介護住居は自治体の医食部が管理し、家族や住民が交代制で運営を行っていく。

 また日本では一般的に馴染みがないものだが、福祉には身体障がい者の性の介護も含まれる。どんな重い障がい者でも性的欲求があり、それを解消すべくセックスボランティアが住まいへ伺い介助を行う。こういったことも福祉の一環として位置づけられる。


○犯罪一覧表 (迷惑・加害行為・処分内容)

 人間に自我がある以上、「私」を優先する気持ちから人間関係のトラブルはプラウトヴィレッジでも続く。トラブルにも人に迷惑をかける程度のものから、人を傷つけるものまであり、内容によって処分内容が異なる。カテゴリ6の迷惑行為なら生活制限措置、カテゴリ5以上は更生施設扱いとなる。深刻な問題になるほど経験値のあるリーダーが担当し、慎重に議論され処分が決定される。下記がその一覧表。


犯罪一覧表 (迷惑・加害行為・処分内容)

カテゴリ

行為と処分内容

決定担当リーダー

具体例

カテゴリ1

殺める行為や自死に追い込んだ場合

(更生施設、10年〜無期)

第1リーダー

殺人

カテゴリ2

身体的に傷つける行為や未遂

(更生施設、5〜20年)

第2リーダー

傷害、暴行、家庭内暴力、わいせつ行為、性的搾取、精神的拷問、放火、延焼、浸害、業務上過失致死、遺棄、監禁、拉致、児童買春、薬物製造、薬物使用(ハームリダクション治療あり)、薬物勧誘、更生施設からの逃亡・反抗、再犯・悪質な累積

カテゴリ3

身の危険を感じさせる行為(更生施設、3〜5年)

第3リーダー

脅迫、恐喝、強要、ストーカー行為、住居侵入、不退去、収賄、凶器準備結集、武装行為・武器の不正所持・準備、不動産侵奪、強盗、器物損壊、不正アクセス行為、廃棄物処理法違反、樹木無断伐採、河川汚染、使用禁止の地下資源の無許可での採取・保管・使用・移動、ID貸与・盗用、成りすましアクセス

カテゴリ4

騙したり社会的評価を下げる行為

(更生施設、1〜3年)

第4リーダー

詐欺、背任、横領、窃盗、営業妨害、証拠隠滅、証拠偽造、偽証、秘密漏示、文書偽造、名誉毀損、虚偽情報による住民扇動、分配係が特定家族に優遇、帳簿改ざん

カテゴリ5

言葉で傷つける行為

(更生施設、1週間〜1年)

第5リーダー

侮辱、差別的発言(性別・出自・宗教など)、発言妨害

カテゴリ6

迷惑をかける行為

(生活制限措置)

第1〜5リーダー

自動車にまつわる迷惑行為、宿泊施設を汚す・破壊する、ゴミを決められた場所以外に捨てる、騒音、工具や農具の無断持ち出しや私物化、消火設備・避難経路への私物放置など


補足

⚫︎処分内容は各担当リーダーが決定するが、犯罪と認定し処分を決定するためには、被害者側が証人や証拠を準備しなければならない。
⚫︎加害者と話し合いに行く時はリーダーと副リーダー、そして住民全員も参加すること。ただリーダーの判断で少人数でも良い。
⚫︎第1リーダーが加害行為を行った場合は、そのカテゴリに対応する出身自治会のリーダーが処分を決定する。
⚫︎第1リーダーがカテゴリ1の加害行為を行った場合は、第1副リーダーが処分決定を行う。第1リーダーと第1副リーダーが加害者なら、第1自治会の第2リーダーの中から推薦でリーダーを決め、そのリーダーが決定する。


○地下資源一覧表(禁止度順)


 分類表 (迷惑・加害行為・処分内容)のカテゴリ3にある「使用禁止の地下資源の無許可での採取・保管・使用・移動」の内容は次の通り。


地下資源一覧表(禁止度順)

地下資源カテゴリ

具体例

再生可能性

プラウトヴィレッジでの扱い(原則)

放射性鉱物

ウラン、トリウム

非再生・高リスク

× 完全禁止(倫理的・安全的に不適)

レアメタル・レアアース

リチウム、コバルト、ネオジム、タンタル、インジウム等

非再生(埋蔵量少)

× 使用禁止(持続不可・依存性高)。ただ自治体の共有PCのみ少量の利用可能。

化石燃料

石炭、石油、天然ガス

非再生(数千万年)

× 原則使用せず(CO₂・枯渇・依存性)

金属鉱物(一般)

鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛、ニッケル

非再生

△ 限定的に許容(再利用・地産条件付き)

非金属鉱物

石灰石、珪砂、粘土、岩塩、石膏

非再生(比較的豊富)

◯ 使用可(地域内採取・低エネルギー)

地下水(浅・深井戸)

湧水、帯水層水

準再生(過剰で枯渇)

◯ 使用可(節度ある管理のもと)

地熱資源

地熱蒸気、高温地下水

準再生(適切管理)

◯ 使用可(地元限定・持続可能な範囲)



○生活制限措置

 レベル1の生活制限措置の内容は下記の通り。原則は「改善の機会を与えながら、段階的に制限を加える」こと。


生活制限措置

カテゴリ

制限内容

決定担当リーダー

説明

カテゴリ1

●退去措置

第1リーダー

問題人物が地域内で関係を改善できず、プライドや対人関係のこじれなどで行動変容が見込めない場合に実施。ここまでの制限で生活が困難になるため、他地域への退去を促す。受け入れ先の自治体を設け、環境の変化による再出発の機会を残す。追い詰めず、逃げ道を残すことで自暴自棄を防ぐ。

カテゴリ2

●電力の供給制限

●水の供給制限

第2リーダー

生活インフラに関わる重大な制限。電力は個別・区域停電などで調整するか、場合によっては発電機や電気配線など生活設備の撤去。医療機器や緊急設備は除外し、最低限の電力供給は確保。水制限は健康に関わるため、慎重かつ段階的に実施。

カテゴリ3

●自動車や宿泊施設の利用制限

第3リーダー

移動と滞在の自由を制限。物理的な行動範囲を狭めることで、社会活動からの一時的切り離しを図る。医療・緊急移動は例外として許可。

カテゴリ4

●分配資源の制限

第4リーダー

鉱物や植物資源の分配を制限し、製造ユニットでの活動量を制限。生活必需品の自給に影響するが、直接の生活インフラ停止ではない。

カテゴリ5

●公共施設や設備の利用制限

第5リーダー

集会所、娯楽施設、学習施設、製造ユニットなどの利用を制限。社会的なつながりや楽しみを減らすことで、間接的に行動改善を促す。最も軽い制限だが、心理的な影響は大きい。


ポイント

個人IDと電気・水道の一括管理設備で制限を加える。
●段階的に厳しさを上げていくことで、改善のチャンスを何度も用意する。

●命に関わる部分は最終段階であり、最大限の慎重さをもって運用。

●例外措置の設定が不可欠。


制限があることのメリット

●話し合いの負担が軽減される。
 明確なルールや段階的制限があれば、感情論だけでなく「決まった手順」があるから議論がスムーズ。高圧的な人、暴力的な人が相手の場合、住民にとって毎回話し合いや注意しに行くのは負担になる。そのため制限を決めておくと、警告の次は制限となるので、ネガティブな影響を受ける負担が軽減される。

●公平感が生まれる
 誰にでも同じ基準が適用されるので、恨みや不公平感が減る。

●感情的対立起こりにくい
 誰かのさじ加減ではなく、ルールに基づく対応なので感情的対立が和らぐ。

●抑止力になる
 「こういうルールがあるなら、わざわざ反抗したりトラブル起こす意味がない」と思わせる効果。


注意したいこと

●制限や罰則が恐怖支配にならないようにする。そのために自我の軽い誠実なリーダーを選ぶ。自我の重い独裁者気質を選んではならない。

●可能な限り、対話や支援で解決する努力を続けること。



対象者

対話不能な自己中心者

 話し合える人間性の人なら、そこで解決を目指す。ただルールを破る上に自己主張ばかりで話に

ならない相手の場合、例えば怒鳴ってきたり、意味不明な論理で会話が成立しないということがある。

住民も、こういうことで日々の時間を使うことを嫌がる人が出てくるケース。



問題人物の同居人について

 例えば住民A男さんが暴力的で会話にならなかったとする。このA男さんは妻、子供、両親も一緒に住んでいたとする。第3段階までの移動制限はA男さんだけの適用ですむが、第4段階の電力や水の供給制限からは、住居そのものに対してとなり、制限対象者と同じ家に同居している人全員ということになる。家族に期待するのは、A男さんと話して協力するよう促すこととなる。もしくはA男さん以外は一時的に転居する。


自治体で対応できない武装勢力が現れた場合

 電気、水道の一括管理のシステムは自治体から県議会、国議会、大陸議会、世界議会と繋がっていく。つまり自治体で対応ができない規模の問題、例えば武装勢力がでてきた場合などは、より大きな階層の議会で話し合われ、制限措置が検討される。例えばAという自治体での暴力行為が大きくなれば、周辺のB、C、D、E、Fといった自治体の脅威ともなるため、それらが県議会で話し合い、県リーダーが最終決定をする。同様にそれが世界議会まで続く。

 仮にAという自治体の電力設備全体を止める必要がでた場合は事前に住民に通達し、他の自治体が住む場所を用意し、受け入れる体制を作る。


○更生施設


 プラウトヴィレッジでは刑務所ではなく、再発防止のための更生施設を設ける。犯罪数にもよるが、件数が少なければ周辺自治体と共同運営で1つを作る。運営管理は住民の当番制。

 ここに入って一定期間出れないという意味では罰ともとれるが、一番の目的は、悪友がいればその関係を断つ。特に何かをするわけでもなく長い時間、1人になって孤独や静寂の中で自分の過去・弱さ・思い込みに向き合うことで、深層の変化が起こることを期待する。ただ孤立し過ぎないように見守りや共感的な対話、傾聴、運動などは地域によって決定していく。


 地域社会全体で考えると、犯罪そのものをなくすことが全体の平和につながるため、一定期間加害者を隔離しながら治療することを目的とする。


○薬物使用者への対応

 貨幣がないプラウトヴィレッジでは、利益目的で薬物を売る人はいなくなる。ただそれでも何かの機会で始めた大麻、コカイン、ヘロイン、覚醒剤などで、薬物依存症に陥る人が出てくる可能性はある。
 日本の厚生労働省の調べでは、覚醒剤使用者が逮捕後、再び使用する率は67.7%。薬物使用者は逮捕後、犯罪者として扱われることから社会と孤立することもあり、負い目もあって助けを求められず、依存症のため再び使用するという悪循環に陥ることがある。


 罰によって薬物をやめさせるのではなく、使用者と一緒になって健康への被害を減らすことに着目したハームリダクションを導入している国が、カナダ、スイス、ポルトガルなど80カ国以上ある。
 例えばカナダの例では、薬物使用者に薬物を使用する小部屋を用意し、ハームリダクション用品を渡す。この中には薬物を安全に使う道具が入っている。止血帯、蒸留水、薬物を温めて溶かす器具、注射器などで、すべて消毒済みの清潔なもの。この部屋で利用者は、自分で手に入れた薬物を持ち込んで使用する。ここでは警察も逮捕することができない。こうして利用者と支援スタッフがつながる場所を設け、困りごとなどを聞き、必要な支援を継続していく。清潔な道具を渡すことで薬物使用者が注射器を使い回すことがなくなり、エイズなど感染拡大を抑える利点もある。
 カナダでは薬物の過剰摂取による死亡者が2年間で35%減少し、この断薬治療につながる人が1年で30%以上増えるなどの成果もでている。

 ただプラウトヴィレッジでは、薬物使用者の状態によって次のように対応を変える。


薬物使用者への対応

状態・対応の視点

ハームリダクションが向いている人

強制的な介入が必要な人

自傷・他害リスク

低い

命に関わるレベルの依存(オーバードーズ常習など)

社会とのつながり・改善意思

あり

家庭内暴力や犯罪に発展しているケース

長期的関係性の支え

可能

自主的治療がまったく機能しない人(統合失調症併発など)

他者への薬物使用拡散

していない

している

自治体内での薬物蔓延度合い

低い

高い(交流や取引が増え止める動機が弱まる)

対応

自主的に医師や更生施設へやってきて治療を行う

更生施設で長期的に治療を行う



○死刑制度について

 プラウトヴィレッジでは、自我に振り回されないことが人間の内面の目的と定めている。自我は過去の記憶とつながっており、その記憶が今の言動を決める。殺人など犯罪を犯す人がいた場合、その行動や動機も過去の記憶が関係している。つまり無心になって自我に振り回されないということは、無意識におこる過去の記憶からくるネガティブな感情に流されないということであり、犯罪など誤った行動がなくなっていく道になる。つまり殺人を犯した者に対し死刑で人生を終わらせるというのは、自我との距離感を学ぶ機会を奪うことになる。そういった意味で、死刑というのはプラウトヴィレッジでは用いない。死刑にするよりも更生施設で自己の内面と向き合う。



○安楽死、自発的飲食中止について


 安楽死には3つの種類がある。


1、積極的安楽死は、患者の明確な意思と耐えがたい苦痛、回復の見込みがない場合に、医師が直接致死薬を投与する方法。

2、自殺幇助は同じ条件で、医師が致死薬を処方し、患者本人が自ら服用する。

3、消極的安楽死は、患者の意思に基づき、回復の見込みがない終末期に延命治療をやめて死期を早める方法。


 安楽死を望む人の理由には、耐え難い身体的痛みや苦痛の継続、身体的機能低下によって自立できない状態や日常生活の著しい制限、絶望感や孤独感などの精神的苦痛などがある。

 安楽死や自殺など自らを死に追いやる行為については、その国の宗教とも関係しており、基本的に禁止されている。ただ積極的安楽死は約3〜4カ国、自殺幇助は約5〜7カ国、消極的安楽死は50カ国以上で認められている。

 安楽死を合法化すると、それを安易に利用する人、社会的圧力で強制的に利用させられる人が増えると懸念する声もある。

 プラウトヴィレッジでは人間に自我があるため苦しむので、自我に振り回されないことを推奨している。その自我との距離感を学ぶ機会として、精神的な苦痛から逃れるための安楽死や自殺を進めることはしない。
 ただ身体的激痛に対しての治療法がなければ、患者にとっては拷問であり地獄でもある。そういった意味で安楽死ではなく、自発的飲食中止(VSED)という選択肢を残しておく。
 これは食べることを止めて死を迎える方法。オランダでは1999〜2003年に自発的飲食中止で年間平均で約2800人が亡くなったという調査がある。日本でも終末期の緩和医療に携わる医師の約3割が、自発的飲食中止で死を早めようとする患者を診たことがあるという調査結果もある。自発的飲食中止は本人が食べるか食べないかを選ぶ行為であり、周囲が無理矢理食べさせることはできない。


 自発的飲食中止の場合、水分摂取をほぼゼロにしてからでも、死亡まで通常1週間〜10日ほど経過する。医師によって適切なサポートがあれば、平穏に死んでいける方法と述べている医師もいる。
 インドのジャイナ教でも古くから同様の行為が行われており、サッレーカナーという。これは徐々に食事の量を減らしていき、最終的に断食による死を選ぶ。これが認められるのは、末期の患者で、飢饉など食糧が得られないときや、老齢で機能を喪失している場合、病気で回復の見込みがない場合とされており、僧侶の監督下で行われる。これは自殺のような衝動的行為とは区別されている。

 プラウトヴィレッジでは自発的飲食中止も安楽死も自殺も推奨はしない。ただどうしても自発的飲食中止をする人は、家族や友人と話し合って納得した上で行う。



○住所の設定案

 プラウトヴィレッジの住所の設定案。最も北にある直径1333mの円を1番とし、そこから時計回りに2~6番まで番号を割振り、7番は真ん中の直径1333mの円に割振る。同じ要領で444mの円、148mの円、49mの円にも1~7番まで割り振っていく。すると住所はPV11111からPV77777の間のどれかになる。フラワーオブライフのプラウトヴィレッジの場合は、PV11111が真北、PV77777は自治体の中心部分の広場になる。もし縦長のプラウトヴィレッジの場合は、同じ要領で北から南へ番号を割り振り、横長の場合は東から西に番号を割振る。住所は「六大州名、国名、県名、自治体名、PV54123」となる。


○世界共通の基準

 資源や物資の輸出入や国家間でお金が行き来する貨幣社会で、資源枯渇、戦争、気候変動、貧困、政治腐敗、プラスチックのゴミ問題などの複雑な社会課題を、一国だけで解決することは困難となっている。各国が自国の利益を優先し、生き残りをかけて競争する仕組みの中では協力が難しく、対立構造が生まれてしまう。

 プラウトヴィレッジは競争して利益を追わなくても生活していける仕組み。そのため、持続可能で平和な社会を実現するために、すべての国や人が守るべき共通の基準を定める必要がある。次の内容はその基準。


「自治体の運営ルール」

●自治体の位置は津波を想定して海岸から7km以上離す。

●自治体での大小の決定は、それを世界100億人が行えば持続可能かどうかを基準に考える。
●地上の自然は、どこまでも100%に近い状態を維持する。

●枯渇していくだけの資源は使わない。栽培か100%再利用できる素材のみを使う。

●河川はコンクリートの堤防建設はできるだけ避け、自然のままの景観を維持する。
●橋は木造アーチ橋と石積みを基本とする。

●景観を壊さぬよう周囲の樹木よりも高い建物は立てないようにする。

●海岸から内陸7kmや山間部は、その周辺の自治体が管理する。もしくは複数の自治体で共同管理する。
●大型施設の建設は周辺自治体とも話し合い、海岸から内陸7kmの間の土地に建設することを検討する。
●自治体単位で判断しづらい事案(大型施設、ロケット、人工衛星、科学的な巨大実験など)は県議会、国議会と上位の組織へ持ち込んで話し合う。

●川沿いに住居は建てず、過去の洪水データを調べ、川岸から数十m離して建設する。

●川沿いは河川敷公園、グラウンド、ため池(養殖含む)、遊水地などを配置する。

●山崩れ・斜面崩壊を考慮し、予測される土砂の到達位置以上に離して建設する。
例えば、斜面の傾斜が30度以上の所、斜面の途中で傾斜が突然急になるところがある高さ5m以上の斜面、谷型(凹型)の斜面、上方に広い緩傾斜地(かんけいしゃち)がある斜面など。

●集中豪雨が2日続くと、山の斜面にはさまれたせまい場所は濁流が押し寄せることを前提とする。
●住居や道路の配置はフラワーオブライフと六角格子を基本とする。
●道路は車椅子、ベビーカー、目の不自由な人の平坦な道を基本とする。アスファルトやコンクリートは極力使用しない。
●階段を作る場所には車椅子用にスロープも設置する。
●山や崖など斜面崩壊の影響を受けやすい麓には作るとしても畑などにし、道路と住居は斜面から離して作る。
●雨水を溜め、それを農地へ使うための効率的な用水路を設置する。今後の温暖化と雨が降らず猛暑日が続いたときの対策のために。
●信号は作らず、交差点は環状交差点(ラウンドアバウト)にする。
●トイレや更衣室は男女+多目的(車椅子など)+ジェンダーフリーを設ける。

●住居周辺に地下式消火栓を設置する。住居まで届く距離のホースを埋設する。

農業用の支柱や柵などは主に竹を使う。網は竹こまいなど。
●自治体の景観は美しくデザインする。そこに行きたくなるような、いるだけで明るい気分になるような。
夫婦別姓は可能で、子供の名字をどうするかも家族などで決める。名前も自由に変えられるが履歴は残る。

全ての人がどこかのプラウトヴィレッジに所属し、個人IDを作ることでその自治体の資源が分配される。


「自治会の対応内容」

●いじめ 

 発見者はどの自治会でも良いので口頭やメールで報告する。リーダーは加害者の所属自治会へ報告し、その自治会が対応を検討する。

 案として塾やスポーツチームなどグループ活動を行う際、代表者は始めに一つのルールを参加者に伝えておく。それは、グループ内でいじめが起これば、その加害者は出入り禁止になるか、グループから離して個別の場所で活動することになるということ。始めに伝えておけば、代表者と加害者が仲が良くても、ルール上だからと言って伝えやすくなる。この対策は子供だけでなく大人のグループでも同じ。

●幼児虐待

 これもいじめと同じで発見者はどの自治会でも良いので報告し、加害者の所属自治会が対応を検討する。幼児虐待は、子どもの脳の発達、感情の制御、人間関係の築き方に深刻な影響を与え、将来の暴力性や反社会的行動につながる土壌を作ってしまうので、早期に対応する。


●その他の犯罪行為

 犯罪行為を発見した場合も発見者は自治会へ報告し、加害者の所属自治会が対応を検討する。


○戦争をなくす流れ


 戦争には軍隊が必要だが、兵士が上官の命令に従う理由は、組織に居続けることで得られる安全・生活・利益の保障があるため。これは人間の様々な組織に当てはまる。


メンバーがリーダーや組織の命令に従う理由

組織例

命令従属の理由

本質的構造

小学校のいじめっこグループ

グループ内で居場所を確保したい、反感を買うと孤立したり自分がいじめられる

居続けるために従う

学校の部活動

チームに残り活動を続けたい、退部すると特典や経験を失い、他の場所で活動できない

居続けるために従う

会社

給料や昇進を維持するため、退職や降格を避けたい

経済的生活保障のために従う

軍隊

食料・住居・給与・身分保障を失わないため

生活保障のために従う


 独裁国家や軍事国家でも安全・生活・利益の何かしらの保障があるため、兵士は上官の命令を聞く。それによって大統領は警察や兵士を使い、恐怖で国民を従わせることができる。しかし脱貨幣社会であるプラウトヴィレッジが世界中に広がると、警察や軍隊も維持することが難しくなってくる。

項目

影響

生活保障

警察や軍隊は給料や支給が前提で動くが、脱貨幣社会では報酬がない → 警官や兵士が従う理由が消える

組織忠誠

給料や身分保障がないため、上官や国家への忠誠心が維持できない

集団行動

大人数を組織して長期間攻撃や防衛行動を行うことが困難になる

結果

軍隊の継続的な維持や征服行動はほぼ不可能になる


 これは世界から戦争をなくし、軍隊や武器もなくなっていくことにつながる。民主主義国家では国民の意思で軍備を縮小できるが、情報統制が行われていることもある独裁国家や軍事国家では、次のような流れになる。

独裁国家の場合

段階

周辺での変化

独裁体制への影響

市民・内部反乱への芽

① 経済基盤の変化

周辺国で脱貨幣・自給自足のプラウトヴィレッジが広がる

外貨・密輸利権が縮小

軍・幹部の収入低下、不満増

② 比較意識の発生

海外に住む家族や友人からの情報も入り、飢えや格差のない隣国社会が見える

体制の正統性低下

市民が別の生き方を知る

③ 物資・補給の圧迫

軍事物資や給料が不足する

軍の補給が滞り、従う理由が弱まる

兵士や警察の離反・反抗が増える

④ 市民ネットワークの拡大

食料・水・医療などを住民同士で助け合い、国境を越えて支援

国家による配給や統制の力が弱まり、軍事力も維持困難になる

自治的な炊き出しや共同農が増え、市民同士の自立が進む

⑤ 内部反乱の発火

越境支援や亡命者や難民受け入れの体制が整う

弾圧コストが増え、力で抑えるのが難しくなる

職能別ストライキや、一部地域で反抗したり、住民が自分たちで生活を始める


 国家による情報統制を行っても完全には封鎖できず、比較による覚醒→不満→離反・内部反乱という流れが避けにくくなる。例えば海外からの情報統制を行っている独裁国家の場合は、その国出身で日本やアメリカに住む人がプラウトヴィレッジを体験し、それを独裁国家に住む家族や友人に伝えることで伝わっていく。


レベル

伝わる情報

反応・影響

市民レベル

移住者の体験談、写真、手紙、SNSなど

「別の暮らしがある」と知る → 不満や比較意識が生まれる

軍・官僚レベル

越境情報や噂、密輸ルートの存在

「自分たちの暮らしも限られている」「体制の正当性に疑問」が生まれる → 忠誠心の揺らぎ

政権レベル

情報統制の限界、内部での不満拡大

弾圧強化 → 逆に反感・抵抗感を増幅させる可能性



 こういった流れが起こるのは、プラウトヴィレッジに住むメリットがあるため。

プラウトヴィレッジに住むメリット

国民層

メリット内容

ポイント

一般市民

食料・水・エネルギーの自給・医療保障

飢えや生活困窮のリスクがなくなり、生活の安定が大幅に向上

都市労働者

住宅費・教育費・医療費などの負担がない

経済的圧迫から解放され、長時間働く必要がない

家族層

子育て・高齢者介護の共同体支援

社会的安心感、孤立感の解消

若年層・技能者

興味・好奇心を追求できる学び・創造の環境

生活のための長時間労働から解放され、精神的充足や自己成長が可能

全層

汚染の少ない自然環境・健康的生活

身体・精神の健康向上

移住志向者

安全に国外で生活できる選択肢

「逃げる」のではなく「安心して生きる選択肢」として認知



 独裁国家や軍事国家がある貨幣社会と比較すると、脱貨幣社会は軍隊を維持するのが難しい社会構造となる。

項目

貨幣社会

脱貨幣社会(プラウトヴィレッジ)

兵士の生活保障

給料・報酬がある → 生活が成立

給料・報酬がない → 生活のための動機がない

中央集権的統制

上官や国家の命令で大規模行動可能

給料という動機がないので、命令だけでは忠誠心の維持が困難

忠誠心・動機

給料・土地・身分保障などで維持

報酬がないため維持困難

結果

組織された軍隊が大人数で攻撃可能

大規模攻撃の組織化がほぼ不可能



 つまりプラウトヴィレッジが広がった世界では軍隊を持つことが難しく、仮に軍事国家が軍事組織が現れても、その征服地域を広げることが困難な構造となっている。

項目

説明

結果

自給・自律

食料・水・エネルギーが地域内で完結

外部支配や供給遮断の影響が小さい

貨幣不要

経済的支配の手段がない

征服しても人々を働かせることができない

小規模分散

世界各地に点在する村とエネルギー源

一箇所制圧しても全体を管理できない

忠誠心の獲得困難

自律運営・共同体重視

軍隊や支配者に従わせにくい

情報操作無効

生活が自給で完結

中央集権的統制が効かない

移動の自由

人々が自由に他地域へ移住できる

支配されても逃げられ、軍隊を組織しにくい

結論

軍事征服は非現実的

永続的な支配はほぼ不可能


 こうして非暴力で社会を変え、戦争中の国の軍事力も低下するよう働きかける。また独裁国家や軍事国家からプラウトヴィレッジに対して攻撃されるリスクを考えて、防衛のための軍事力の廃止は最後に行う。また独裁国家内では弾圧や攻撃のリスクが高くなるので、その周辺国でプラウトヴィレッジが広がった後に支援を行う。


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