第1章 狩猟採集〜農村時代:文明の繁栄と衰退のパターン

 文明の繁栄と衰退のパターン

著者:久保田 啓敬

目次

第1章 狩猟採集〜農村時代

◯序文

◯人間の生活様式の変化

◯農村生活の開始による主な変化

◯日本の縄文時代

◯弥生時代と戦争の増加

◯資源の略奪戦争


第2章 都市国家と貨幣の始まり

◯メソポタミア文明の国家成立の過程

◯初期の秤量貨幣

◯雇用の始まり

◯税の始まりと軍

◯農村的労働と都市的労働

◯貨幣導入によって起きた問題

◯格差

◯身分制度

◯売春・娼婦

◯数学と文字の発展

◯封建制と移動制限

◯貨幣制度が存在しなかったインカ帝国

◯古代スパルタ(ギリシャ)

◯ローマ帝国

◯インフレ


第3章 産業革命後

◯農村から都市への移住が加速

◯社会主義・共産主義

◯ブータン

◯日本

◯世界的な都市化の傾向

◯農村と都市の価値観の違い

◯貨幣的価値観がもたらす伝統文化への影響

◯農村と都市の幸福度

◯福祉国家の北欧5カ国の幸福度

◯合計特殊出生率(TFR)

◯年金制度

◯近所の助け合いと犯罪率の関係

◯自殺率

◯権威主義と民主主義

◯独裁政治と民主主義の幸福度

◯鎖国や孤立政策

◯自然界の法則、S字カーブ、ベル型、のこぎり型


第4章 総括

◯成長から衰退へ向かう典型パターン

◯安心感と自由を求める人間

◯無意識から意識的な社会システムへ



第1章 狩猟採集〜農村時代

◯序文

 2020年代の貨幣社会には戦争、貧困、格差、政治腐敗など様々な社会問題が見られる。これらは古代からも見られる問題でもあり、科学技術が発展し、言語、文化、ファッションは違っても、根本的な部分で人間は同じことを何千年と繰り返している。そのパターンを知ることが、意識的に平和で持続可能な社会を構築する上での鍵となる。

◯人間の生活様式の変化

 約700万年前、共通祖先からヒトとチンパンジーに分岐。そこからの生活様式は、狩猟採集社会、自給自足の農村社会、自給自足の農村社会+貨幣社会、貨幣中心社会へと移り変わっていく。

区分

時代・年代

主な出来事・特徴

生活様式・価値観の特徴

狩猟採集社会

約30万年前〜紀元前9000年頃

ヒトのグループの中から、アフリカでホモ・サピエンス出現。

自然と共生し狩猟採集を中心とした移動型生活。集団の結束と共有が基本。二足歩行、言語、道具の獲得・発達。

約30万年前:特に東アフリカで出現。
約7万年前以降:ユーラシア各地。

約5万年前:オーストラリアなどへ拡散。

自給自足の農村社会

紀元前9000年頃〜紀元前3000年頃

農耕と定住の開始。農村的共同体の成立。農業革命。家畜の飼育、陶器・織物技術の発達。

自給自足を基盤とした共同体生活。土地や自然と密接に結びつく。定住による人口増加と社会の複雑化。

中東、中国黄河・長江流域、インダス川流域、メソアメリカ、アンデス高地、ニューギニアなど。

自給自足の農村社会+貨幣社会

紀元前3000年頃〜1700年代後半

都市国家・文明の成立。メソポタミア文明で貨幣の原型が導入される。文字、青銅器・鉄器技術、国家制度の発達。

自給自足の農村生活と貨幣経済が共存する。階層社会の形成。宗教・哲学の発達。

古代メソポタミア、エジプト、インダス文明、古代中国、古代ギリシャ・ローマ、マヤ・アステカ・インカ文明など。

貨幣中心社会

1700年代後半〜

産業革命の開始。蒸気機関・機械工場の発展で都会的価値観へ急速に移行。

貨幣を稼ぐことが生活の中心。自給自足生活が薄れていく。個人主義・競争原理の浸透。大量生産・大量消費社会の成立。

イギリスを中心とした西欧諸国から世界各地へ拡大。



 ホモ・サピエンス(現生人類)の出現から貨幣が存在しない社会で暮らしていた期間は、人類史の約96.7%にあたる。生活が貨幣中心に移行し始める産業革命以降の期間は約0.087%ほど。

ライフスタイル

期間

期間の長さ

割合

(約30万年に対して)

狩猟採集社会

約30万年前〜約1万年前

約29万年

約96.7%

自給自足の農村社会

約1万年前〜紀元前3000年頃

約7000年

約2.3%

自給自足の農村社会+貨幣社会

紀元前3000年頃〜1760年代後半

約4800年

約1.6%

貨幣中心社会

1760年代後半〜2020年代

約260年

約0.087%



 貨幣が登場したのは紀元前3000年頃であり、貨幣が誕生する前の世界での主な経済取引形は、次のようになっていた。


貨幣誕生以前の取引形態

取引形態

内容の説明

特徴・役割

主な地域・文化圏

共有

集団や共同体内で物資や労働を分かち合う。

経済的な所有意識が薄く、信頼や結束が基盤。

先住民社会、狩猟採集民の多くの地域(アフリカ、オーストラリア先住民など)。

物々交換

物品同士を直接交換する。

交換対象の価値の一致が必要で、限定的な範囲で機能。

世界中の狩猟採集社会や初期農耕社会。

贈与

無償で物品やサービスを提供し、関係強化を図る。

社会的絆の形成や信用、返礼を期待する慣習。

太平洋諸島、北米先住民社会、アフリカ部族社会など。

信用取引

信頼関係に基づく貸借や将来の労働の約束を行う。

貨幣を介さず、個人間の信用で成立する。

世界中の多くの農村社会や部族社会。



◯農村生活の開始による主な変化


 紀元前9000年頃に農業革命が起こり、定住・農耕によって農村生活が始まる。

農業革命が起こった地域と年代

地域名(現代の国・地域)

主な作物・家畜

農業開始の目安年代(紀元前)

備考

肥沃な三日月地帯(イラク、シリア、トルコなど)

小麦、大麦、レンズ豆、ヒツジ、ヤギ

紀元前9000〜8000年ごろ

最古の農業地帯。農業革命の中心地とされる。

ニューギニア高地

タロイモ、バナナ

紀元前7000〜6000年ごろ

世界最古級の根菜農耕。

中国・黄河流域

アワ、キビ、ブタ

紀元前7000〜6000年ごろ

粗粒穀物中心の農業。

中国・長江流域

稲(イネ)

紀元前6500〜5000年ごろ

世界最古級の稲作地帯。

メソアメリカ(メキシコなど)

トウモロコシ、インゲン豆、カボチャ

紀元前7000〜4000年ごろ

トウモロコシ栽培は特に重要。

アンデス(ペルー、ボリビアなど)

ジャガイモ、キヌア、リャマ、アルパカ

紀元前6000〜4500年ごろ

高地農業文化が特徴。

サヘル・西アフリカ(ナイジェリアなど)

アワ、ソルガム(モロコシ)

紀元前5000〜3000年ごろ

独自の農耕文化が発達。


 農業革命によって人間の暮らし、社会構造、価値観、自然との関係に大きな変化が起こる。

分野

主な変化

説明

定住化

住む場所が固定される。

移動型から村・集落を構える生活へ。家屋、貯蔵庫、道具の保管が可能に。

農耕・畜産

食料を育てる生活へ。

自然から採る生活から、種をまき収穫する生活へ。

食料の蓄積と余剰

生産量が増え、保存・分配が可能に。

食料が安定し、分業・交換・階層社会の基盤に。

分業の始まり

人々が異なる役割を持つ。

農業、道具作り、管理など、専門化が始まる。

社会の構造化・階層化

指導者や所有概念の登場。

土地や食料の管理が必要になり、指導層の誕生や富の偏りが生まれる。

宗教・儀式の発展

土地・自然・豊穣への祈り。

自然環境と定住との密接な関係が宗教・信仰の発展を促す。

建築・技術の発展

定住に伴いインフラが発展。

灌漑・道路・住居・倉庫などが発達。

文化・記録の開始

書記法や暦の登場。

農業や貯蔵の管理のため、記録が必要に。文明の基礎へ。


 
 ただ農村生活の始まりは、進歩とは言えない複雑な現象でもあった。

項目

メリット

デメリット

食料

安定的な食料生産と備蓄が可能。

天候不順や災害時の飢饉リスク増加。栄養の多様性低下。

人口

農場の子供は狩猟に比べて危険が少ない。人口増加を支えられる。

集団規模拡大と家畜由来の病気により感染症拡大。

生活

住居の定住化で生活基盤が安定。

労働負担の増加。糸紡ぎ、織物、裁縫、狩猟・漁業用の網作りなど単調な作業の増加。

社会

分業や専門職の成立、文化発展。

社会階層化や支配階級、不平等の発生。

環境

土地の計画的利用・農業技術や灌漑技術の発展。

-

安全

防御的な居住地や武器の組織的生産。

食料や資源を狙った組織的戦争・暴力の増加。

知識・技術

工具、建築技術の進歩。

狩猟に関する知識の喪失。

出典:
Paleopathology at the Origins of Agriculture , Mark Nathan Cohen and George J. Armelagos
https://www.researchgate.net/profile/George-Armelagos/publication/236231629_Preface_to_the_2013_Edition_Paleopathology_at_the_Origins_of_Agriculture/links/00463517304e3499ce000000/Preface-to-the-2013-Edition-Paleopathology-at-the-Origins-of-Agriculture.pdf

Agriculture and the “Neolithic Revolution”, 

HIST-1500: World History - Cultures, States, and Societies to 1500 Copyright © by Eugene Berger, Georgia Gwinnett College is licensed under a Creative Commons Attribution-ShareAlike 4.0 International License, except where otherwise noted.
https://uen.pressbooks.pub/worldhistory1/chapter/agriculture-and-the-neolithic-revolution/#footnote-63-10


 エディンバラ大学・ボーンマス大学・ルンド大学などの国際共同研究チームが、紀元前6000〜2000年頃の新石器時代の北西ヨーロッパの2300体以上の農民の骨格を調査した結果、10人に1人以上が武器による負傷をしていたことが判明した(PNAS, 2023)。これは農耕と定住によって土地や収穫物・家畜といった奪う価値のある資源が生まれ、集落間の略奪戦や組織的暴力(ときに集落全体の破壊)が頻発したことを示す証拠。研究者たちは、農耕社会が戦争の土台を築いたと結論づけている。

出典:

“Violence was widespread in early farming society,” University of Edinburgh, 2023.
https://www.ed.ac.uk/news/2023/violence-was-widespread-in-early-farming-society



◯日本の縄文時代


 縄文時代は農業革命とは異なる流れで、農耕社会には完全に移行していない点が特徴。本格的な稲作農耕は紀元前1000年頃の弥生時代に、中国から伝わって始まる。

縄文時代(日本史)

項目

内容

時期

約1万3000年前(紀元前1万1000年頃)〜紀元前300年頃

生活様式

主に狩猟・採集・漁労。自然との共生。土器文化の始まり。

農耕

基本は非農耕社会。後期に一部で焼畑的な栽培(ヒエ・アワなど)が始まるが、主食ではない。

特徴

定住化が進む(竪穴住居)、貝塚や土偶、装飾性の高い縄文土器など文化的な豊かさ。

社会

比較的平等で戦争の痕跡が少ない。小規模集団での共存。


縄文時代に戦争がほぼなかったとされる理由

理由

説明

人口が少なかった

縄文時代の日本列島は人口密度が低く、他集団と衝突する機会が少なかった。資源をめぐる競争も激しくなかった。

資源の分布が比較的豊かだった

海・川・山など自然資源が豊かで、食料が比較的安定。生存のために他集団と奪い合う必要が少なかった。

交易と共存が重視された

土器・黒曜石などの広域交易が行われていたが、それは争いではなく共存・交流の形で行われていたとされる。

武器が戦争用でなく狩猟用だった

弥生時代に入るまで、本格的な戦争用武器(鉄製の剣や矛など)が発見されない。縄文の矢や槍の先端に取り付ける石鏃(せきぞく)は主に狩猟用。

人骨に外傷が少ない

考古学的に、縄文時代の人骨には戦闘による集団的外傷がほとんど見られない(弥生時代以降は明確に増える)。

階級社会が未発達だった

支配・被支配の関係や財産格差がほとんどなく、集団内での争いが激化しにくかった。


 岡山大学の松本直子教授と中尾央助教らの共同研究グループは、縄文時代の人骨データを用いて暴力による死亡率を数量的に算出した。総数242カ所の遺跡のうち、13カ所から傷のある人骨が出土。人骨2582点のうち、怪我をしていたのが23点、暴力による死亡率は1.8%だった。これは他の狩猟採集文化における暴力死亡率(10数%)と比較して極めて低いことが明らかになった。


出典:中尾 央・松本 直子ほか(2016)「日本先史時代における暴力と戦争」『Biology Letters』掲載、岡山大学大学院社会文化科学研究科・山口大学国際総合科学部



◯弥生時代と戦争の増加


 縄文時代は人口や資源、価値観の面でも戦争が発生しにくい条件が整っていたと考えられている。しかし弥生時代に入って農耕が本格化し、土地や食料、労働力をめぐる競争が始まったことで、争いや戦争が増加していく。つまり農村ができると、戦争が増加する傾向にある。

農村の成立が戦争を増加させた理由

要因

説明

土地の私有化と定住

農業には耕作地が必要で、人々が特定の土地に定住するようになり、土地の所有をめぐる争いが発生する。

食料や資源の備蓄

農業で余剰食料が生まれ、それを奪う価値が出てきた。他集団による略奪の動機が高まる。

人口の増加と集団の拡大

人口が増え集団が大きくなると、集団間の摩擦や衝突のリスクが上がる。

階級社会の発展

指導者や戦士階級が生まれ、戦争を主導・指示する階層が登場。

支配と従属の構造化

階層社会の進展とともに、強力な集団やリーダーが他の集団を支配・従属させようとする関係が生まれる。従属を拒む集団との間で戦争が起こる。戦争は支配の手段となる。

武器・防衛の発展

農耕社会では定住するために防衛の必要性が増し、武器や防壁が発達する。それ自体が戦争の準備でもある。


 先程のヨーロッパ初期農民約2,300人のうち10人に1人に武器による外傷の痕が見られたのと同様に、弥生時代以降の日本では、環濠集落(防御のための溝)や、武器と見られる道具が増加し、組織的戦闘の痕跡が確認されている。
 
・石鏃(せきぞく)が縄文時代に比べて大きくなり、威力が増した。
・愛知県朝日遺跡では最盛期には1000 人もの人々が生活していたと推定され、三重の濠(ほり)に加え、その外側に逆茂木(さかもぎ)や乱杭(らんぐい)などの防御施設が作られていた。
・九州の北部から伊勢湾沿岸の地域では、非常に高いところに村を作っていた。
・弥生時代には大陸から、銅剣、銅矛(どうほこ)、銅戈(どうか)、鉄剣など金属製の武器が伝わってきた。
・武器の破片が刺さった人骨は、多くの遺跡から発見されている。

 狩猟採集社会でも戦争は存在していたが、農村社会では所有・備蓄・人口増加・階層化が進んだことで競争的側面が大きくなり、戦争の規模と頻度を拡大させた。戦争の要因も多様で、資源競争、人口圧、気候変動、文化的要因など。

出典:
あいち朝日遺跡ミュージアム
https://aichi-asahi.jp/online-museum/

藤井寺市『広報ふじいでら』第319号 1995年12月号より
https://www.city.fujiidera.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkai/bunkazaihogo/koramukodaikaranomemessezi/kodaisinonazo/1387334088860.html

栃木県埋蔵文化財センター
http://www.maibun.or.jp/qa/a32.html#:~:text=%E3%83%BB%20%E5%BC%A5%E7%94%9F%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%80%81%E4%B9%9D%E5%B7%9E,%E3%82%84%E3%81%98%E3%82%8A%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82


◯資源の略奪戦争


 古代の資源をめぐる争いは、2020年代に入った産業文明でも起こっている。

時代

主な資源

争いの理由

対立の形

古代

水、農地、牧草

生存・食糧確保

集落・部族間の衝突

2020年代

石油、水、レアメタル、土地、木材、金、宝石など

経済的優位・国益・安全保障

国家間戦争、内戦、代理戦争



資源をめぐる戦争の例(1800年~2025年)

戦争名・紛争名

時期

主要対立構造

争奪資源

詳細説明

チンチャ諸島戦争

1864-1866年

スペイン vs ペルー・チリ

グアノ(鳥糞石)

肥料として極めて価値の高いグアノの支配権争い

太平洋戦争

1879-1884年

チリ vs ペルー・ボリビア

硝石(しょうせき)

アタカマ砂漠の硝石鉱山の支配権争い

チャコ戦争

1932-1935年

ボリビア vs パラグアイ

石油

チャコ・ボレアル地域の石油資源をめぐる争い

第二次大戦・蘭印作戦

1942年

日本 vs オランダ

石油

日本の蘭領東インド石油確保のための軍事侵攻

イラン・イラク戦争

1980-1988年

イラン vs イラク

石油・水路支配権

ペルシャ湾石油輸送路とシャット・アル・アラブ水路の支配権

湾岸戦争

1991年

多国籍軍 vs イラク

石油

イラクのクウェート石油資源強奪に対する軍事介入

コンゴ内戦(第二次)

1998年-継続中

武装集団による資源支配

コルタン、金、ダイヤ、コバルト

世界のコバルト約70%、コルタン約80%を産出する鉱山の支配権争い

南北スーダン国境紛争

2011年-断続的

スーダン vs 南スーダン

石油

南スーダンの油田とスーダンのパイプライン支配権争い


 直接の戦争には発展していなくても、間接的な経済や圧力による資源の争いも起こっている。

間接的・経済的な圧力や制限による資源をめぐる争い

資源・対象

地域・国

争いの内容

状況

主な時期・動き

領海・海洋資源

南シナ海(中国、ベトナム、フィリピン、マレーシアなど)

領有権、漁業権、海底資源権

軍事衝突は回避されているが緊張継続

1970年代〜、南シナ海航行自由作戦など継続

領海・海洋資源

北極海(カナダ、ロシア、デンマークなど)

石油・天然ガス、航路権

氷解に伴い権益競争中、外交摩擦あり

2000年代以降、氷解で航路・資源競争顕著化

レアメタル・鉱物

コンゴ民主共和国

コバルト、銅の採掘権

多国籍企業と国家の利権争い、局地的衝突もあり

2010年代〜、電池需要増で争奪激化

水資源

ナイル川(エチオピア、エジプト、スーダン)

ダム建設、水供給

交渉・外交圧力で緊張維持

2011年以降、エチオピア「ルネサンスダム」建設で対立

水資源

メコン川流域(中国、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム)

水力発電と農業用水

影響調整で摩擦継続

2000年代〜、ダム建設による影響問題

領土・戦略地

グリーンランド(デンマーク・米国)

トランプ氏による購入構想、資源・安全保障

デンマーク政府は断固拒否、外交摩擦継続

2019年、2024年〜2025年に購入構想が報道・発言


 農業革命から数えても人間は資源争奪という同じ理由で、約1万1000年間争い続けている。

 資源や備蓄があるとそれを狙う略奪戦争が起こるが、そうして人から奪い、物質的優位になっていくとリーダーの発言力や影響力は増していく。なぜなら共に住む人々の生活を一定程度保障することができるため。
 そこからは様々な要素が絡み合い、戦争が起こる理由も多様化していく。征服欲、名誉、承認欲求、強さの証明、影響力の拡大などリーダーの欲望、防衛的な要因、民族的対立、宗教対立、経済的理由、周囲の期待と圧力など。

 狩猟採集時代は移動、狩猟、食べる、寝るの繰り返しで、シンプルな生活だった。そこから農村ができ、始めは資源と生存のための戦争が起こった。やがて都市国家という規模になるにつれ、身分や階層ができ、役割ができ、権力が強化され、商業ができ、貨幣も導入されると、人間関係も戦争が起こる要因も複雑化していく。

 これらの背景にあるのは、共有という意識が低い社会における奪い合い。共有意識が低い社会では所有という意識が強くなる。そして誰かが得をすれば誰かが損をするという発想が強くなり、これが奪う・奪われるという対立構造を生み出す。私有財産制、国境、階級制度などの社会制度は、共有よりも排他的所有を前提とした仕組み。これらが奪い合いを構造化している。
 2020年代でも見られる資源外交、領土問題、経済格差の拡大、環境問題での国際対立も、根本的には限られた資源をどう分けるかではなく、どう奪うかという発想から来ている。これが共有を土台とした社会であれば、資源と領土をどのように全体に公平に分け合うか、持つ者と持たない者といった経済格差をなくすためにどういった社会制度にするかと、考え方の根本が変わってくる。すると国の利益よりも、地球全体でどのように共有できる社会にするべきかという発想になる。資源を公平に共有・分配する方法がないと、それを巡っての戦争が起きるというのは歴史が証明している。つまり国境を超えた地球規模での資源管理システムを築かなければ、戦争の根本的な原因をなくすことができない。

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