「AIの時代にどうして読み書き、計算が手書きで必要か。」


 2024年1月に学術誌『Frontiers in Psychology』に掲載されたノルウェー科学技術大学(NTNU)のオードリー・ファン・デル・ミーア氏とルード・ファン・デル・ウィール氏による研究では、大学生36人を対象に、手書きとタイピングの際の脳活動を高密度脳波計測(HD-EEG)で比較した。

 デジタルペンで手書きする際、脳全体の広範な領域が活性化され、特に記憶形成に関連するアルファ波やシータ波の活動が顕著だった。一方、キーボードでのタイピングでは、活性化される脳領域が限定的で、これらの脳波の活動も低かったと報告されている。
 よって手書きによって得られる視覚的および運動感覚的な情報が、脳内の広範な接続パターンを促進し、学習や記憶の形成に有益であると示唆されている。研究者らは、特に発達段階にある子どもたちにとって、手書きの経験が脳の認知的発達や学習効果を高めるために重要であると述べている。

 この研究を参考に四則演算も考えた場合、AIや電卓は計算過程を表示することもできるが、利用者が答えだけを求める傾向があるため、思考の過程を省略しやすくなる。しかし手書きで計算することにより視覚・運動・空間処理など複数の脳領域が関与し、記憶の定着に有利となる。

 また手書きは一つ一つの工程を可視化するので、どこでミスをしたか気づきやすく、繰り上がりや繰り下がりなど論理的な構造が理解しやすくなる。


 手書きとAIや電卓には他にも下記のようなポイントがある。


・AIの精度が向上しても、指示を出す人間の指示が不明確であればAIは間違った解釈をする。つまりAIは優秀でも人間のミスはなくならないので、AIの回答ミスも今後はなくならない。よって人間が自分で読んで計算して確認できる最低限の能力が必要になる。


・もし自分で四則演算ができなければ、AIが出した答えを鵜呑みにするしかない。すると直感的にこの答えは数が大きい、小さいなどのおかしさに気づくこともなくなる。


・AIにもミスがあることから、大事な場面や資料作成では、AIが出した答えを鵜呑みにせず、自ら読み解き、計算し直すことが求められる。自分で確認できないまま他者に伝えてしまうと、責任ある説明ができず、信頼を損なう可能性もある。


・手書き経験が少ないと、文字構造への注意が浅くなりやすく、AIによる細かな誤字にも気づきにくくなる可能性がある。


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