第3章5 産業革命後:文明の繁栄と衰退のパターン

 

◯農村と都市の価値観の違い

 古代から続いてきた自給自足で成り立つ農村と、生活が完全に貨幣に依存する都市では価値観が大きく異なる。その傾向をまとめたのが次の表。

農村の自給自足的価値観と都市の貨幣的価値観

項目

農村の自給自足的価値観

都市の貨幣的価値観

暮らしの価値観

共同体・共生型。

個人主義。

価値の基準

つながり・安心・役割。

金銭・効率・成果。

中心にあるもの

必要、充足、持続可能性。

価格、利益、効率。

判断基準

生活に必要かどうか、共同体や自然との調和。

金銭的コスト・リターン。

経済の仕組み

互酬(ごしゅう)経済・協同体経済。

貨幣経済・資本主義。

労働観

生きること=働くこと。

(生活そのもの)

働くこと=お金を得る手段。

(生活のため)

労働内容

自給自足や農業。

サラリーマンや工場労働など貨幣所得型の労働。

通勤時間

数分〜10分以内(徒歩・自転車・隣の畑)。

平均30分〜1.5時間(電車・バス・車)。

精神性・価値観

調和・自然との共生・役割意識。

自己実現・成功・競争。

社会の形

地域・共同体・生活圏。

国家・制度・巨大システム。

階級意識

希薄。役割や年齢の違いはあっても、上下関係は強くない。

明確。収入・職業・学歴などで見えないヒエラルキーができやすい。

人付き合いの幅

横断的。収入や肩書に関係なく、助け合いや共同行事で関係が築かれる。しがらみが強いという見方もある。

同じ階層・似た経済状況の人との付き合いが中心になりやすい。

人間関係の基準

人柄・誠実さ・共同作業での信頼感など。

有用性・メリット・地位・外見・消費力などで判断されがち。

人間関係

助け合い・贈与・信頼ベース。
血縁・地縁・顔の見える関係。

交換・契約ベース。
個人主義・匿名性・ドライな関係。

文化・伝統との関係

伝統継承・儀礼・精神的つながり。

脱伝統・近代化・便利さ優先。

幸福の定義

心の満足・関係性・安心感。

物的豊かさ・自由・選択肢の多さ。

生き方

日々の充足・循環的暮らし。

目的達成・上昇志向。

家族形態

拡大家族・多世代同居。

核家族・単身世帯。

子育ての捉え方

共同体の未来・自然な営み。地域全体で見守る「地域の子ども」意識。

費用負担・投資的視点。家族単位で完結、保育施設・サービス頼み。

出産・子育ての判断基準

家族が助け合えるか。田畑や生活が回るか。

お金が足りるか。生活レベルが維持できるか。

子供と労働の関係

子ども=暮らしの一部として役割を担う存在。

子ども=保護すべき存在(労働から切り離す)。

老後・介護

家族・近隣による支え合い。

社会保障・施設依存。

高齢者との関わり

老人会や近所の支援があり孤立しづらい。

高齢者の孤立が深刻。

消費のスタイル

物々交換・分かち合い・手作り。

購買中心・便利重視。

食生活

手作り・地産地消。

外食・加工品中心。

農的活動

自給自足・自家菜園・分け合い文化(余った野菜を近所に配るなど)。

食料はすべて購入、家庭菜園程度は見られる。

居住空間

持ち家・地に根ざした暮らし。

マンション・賃貸・持ち家。

地方の人間関係の特徴

挨拶・世間話が日常、顔の見える関係、助け合い意識が強い。

無関心・プライバシー重視、匿名性。

冠婚葬祭・行事

地域ぐるみでの参加、準備・後片付けも協働。

外注・簡略化・個別化。

災害時の助け合い

自主防災組織が機能し、助け合いが自然に生まれる。

連携が難しい場合が多い。


都市にあって農村にない(または希薄な)もの

分野

都市の特徴(農村にはあまりないもの)

経済のしくみ

貨幣中心の経済活動(給与所得、カード決済、株式投資など)

仕事の形

専門職・スキルベースの労働市場、ジョブ型雇用

時間管理

スケジュール・締切・時給に基づく時間感覚

教育制度

高度に制度化された教育(塾・私立校・資格重視)

医療・福祉

高度専門医療機関や福祉サービスの集中

交通インフラ

鉄道・地下鉄・高速道路・シェアモビリティなど

デジタル化

スマートシティ化、キャッシュレス決済、オンライン行政手続き

選択肢の多さ

商品・サービス・職業・ライフスタイルの多様性

匿名性

個人主義的で関係性が流動的、干渉が少ない

消費文化

ブランド志向・流行消費・利便性重視

広告・情報量

広告・SNS・情報メディアの氾濫、過剰な選択肢

エンタメ・文化

映画館、ライブ、アートギャラリーなど都市型エンタメの集中

競争環境

受験・就職・出世・SNS競争など、成果やステータス重視

住宅事情

マンション・賃貸・転勤に適した可動性重視の住環境

国家との関係

税制・法制度・福祉など制度に依存しやすい社会構造


 日本の地方では農村的な共同体的・自給自足的価値観がまだ根強く残っている。ただし、貨幣的価値観の浸透や都市化の影響で変化しつつもある。例えば若い世代の流出や核家族化、スマホ普及による情報の都市化によって、徐々に共同体意識が希薄になってきている側面など。反対に都市に住んでいる人でも、農村的な共同体の価値観が強い人もいる。

 1945年の戦後、多くの地域では依然として家族・地域・農村共同体中心の生活が主流だった。子どもは生活の一部であり、将来の労働力や家族の支えとして多産が自然と促された。効率やコスト意識など貨幣的価値観はまだ生活の中心ではなく、人口抑制の意識も薄かった。

 しかし時代が進み、都市に住む人が増えると、生活費を稼ぐために夫婦共に働くことが増える。都市で子育てをすると、誰かの助けが必要になる。その時に実家の親などが近くにいてくれればいいが、それができないこともある。

 日本では仕事などで保護者が昼間に家にいない小学生を対象に、放課後や長期休みに安心して過ごせる場を提供する学童保育がある。この利用者が1998年には約33万人だったのが、2023年には約140万人と4倍近く増えている。利用者の年齢は2023年では1年生(6〜7歳)が30.5%と最も多く、2年生(7〜8歳)が27.9%、4年生(9〜10歳)が11.6%、6年生(11〜12歳)が2.9%となっている。
 少子化が進んでいる日本でこの学童保育利用者の急増は、都市化による共働き世帯の増加や地域コミュニティの希薄化といった社会変化を象徴している。

出典:
調査結果1 2023年5月1日現在の学童保育数、入所児童数, 全国学童保育連絡協議会
https://www2s.biglobe.ne.jp/~Gakudou/pdf/pressrelease20240117.pdf?utm_source=chatgpt.com


 農村の中に貨幣が導入されると、始めは補助的役割だった貨幣が徐々に生活の目的に変わっていったのが、紀元前3500年頃の古代メソポタミアから2020年代までの流れ。貨幣が導入されると商業が発達し、企業や個人が効率化・規模拡大を追求し、競争の激化が都市集中を加速させる。
 逆説的に言うと貨幣社会のもとでは、農村の自給自足生活や小規模・協働的共同体の維持が困難になる。

 貨幣的価値観が広がり個人主義が強まってくると、共同体による助け合いの意識が希薄になる。すると当然、孤立した人々には不安感が芽生えてくる。


貨幣的価値観と人々の孤立感・不安・孤独感・鬱の関係

項目

内容

主な影響

評価の数値化・競争化

成果や価値がお金・数字で測られるため、他者との比較・競争が常態化。

不安、自己否定、ストレス、鬱。

関係の希薄化

人間関係が利用できるできないの損得で見られやすく、助け合いより自己利益が優先される。

孤独感、信頼低下、社会的孤立。

生活の不安定化

収入減・物価高騰・雇用不安定など経済的要因が、生活の安定を直接脅かす。

慢性的ストレス、将来不安、抑うつ。

時間の切り売り

時間=金と見なされ、休息・余暇が軽視される。

心身疲労、燃え尽き、感情の麻痺。

消費と自己価値の混同

消費能力が自己価値の指標と誤認され、買えないと無価値と感じる傾向。

虚無感、承認欲求の肥大、依存傾向。


 こういった貨幣的価値観は徐々に社会全体に浸透し、時間の使い方、お金の稼ぎ方、自己評価、他者との関わり方すべてが貨幣的価値観に染まる。これが雰囲気や空気感として広がり、社会の常識や当たり前として定着していく。そして人々の行動や判断基準は無意識のうちに貨幣的価値観に支配されていく。


◯貨幣的価値観がもたらす伝統文化への影響

 都市化すると個人主義・効率主義や共同体意識の希薄化が進むので、伝統文化も衰退していく。

都市化・貨幣価値観がもたらす伝統文化への影響

項目

農村の自給自足的価値観

都市の貨幣的価値観

結婚式・冠婚葬祭

地域全体で祝う・手作り中心・近所総出の準備。

コストが重視され簡略化・外注化・招待人数も最小限。

嫁入り・持参品文化

嫁入り道具を用意。親族や地域が支援。

非効率とされ廃れる。経済合理性優先で不要視される。

季節の行事・年中行事

地域での伝統行事(節句・盆踊り・餅つき)を世代で継承。

行事の省略・商業イベント化・家庭内ですら省略傾向。

娯楽・楽しみ

地域の祭り・寄り合い・歌や遊びなど共同行事が中心。

個人や家族単位の娯楽(TV・スマホ・ネット・娯楽施設)。

近所づきあい

お互いさま文化・日常的な交流・助け合い。

無関心・プライバシー重視・トラブルを避け接点を持たない。

家の開放性・生活空間の共有

玄関の戸を開けたままなので、近所の人が声をかけて勝手に入ってくるのが普通。生活空間は地域と重なっている。

鍵とプライバシー重視。生活空間は完全に個人・家族単位で隔離される。隣人の顔も知らないことがある。

物の価値

物は長く使い、修繕し、譲り合う。

新品・ブランド・効率重視。使い捨て・消費のスピードが早い。

家業の継承

親から子へ、家族単位で仕事や技術、土地などが引き継がれる。特に長男は家業や土地を継ぐことが多い。

家業の継承は少なくなり、子どもは企業などへ就職することが一般的。仕事は家族単位より個人単位での選択が多い。

家族の役割分担

子どもから大人まで生活のための労働に参加。家族全員が一つの生産単位となる。

子どもは基本的に勉強が役割となり、労働には参加しない。


 人間社会は複雑に様々な要素が絡み合う。農村と都市の価値観という風に二つにきれいに分かれるわけではなく、農村の中にも都市の価値観が混ざったり、都市の中でも町内会など趣味のコミュニティが活性化している場所もある。

 こういったことを前提に大きな傾向としてになるが、都会のように周囲に誰が住んでいるのか分からず、人間関係が断片的・匿名的になると、地域はただの生活空間となり、地元への帰属意識や責任感は希薄化していく。その中、都市の貨幣的価値観ではすべての物事がコストと利便性で測られる。伝統的な行事は非効率とされ、必要ないものとして排除されやすい。そして費用面だけでなく、「やる意味があるのか?」という合理主義的疑問が若い世代に広がる。

 一方、農村のように顔見知りが多い地域では、日常的な挨拶や助け合いを通じて、人と人とのつながりが可視化される。その結果、地域そのものが自分の居場所として心に根づき、地元意識や共同体意識が自然と育まれる。
 地元への帰属意識が強くなることで、人はその地域を自分ごととして捉えるようになる。すると自然と地域への貢献意欲が高まり、祭りや清掃活動、伝統行事などにも主体的に参加する傾向が強まる。地域の課題や他者の困りごとも無関係なことではなくなり、共助の精神が日常に根づいていく。

 そして地方の農村でも都市化の波は押し寄せている。

農村の都市化

項目

内容・特徴

行政的変化

農村自治体が都市自治体へ統合されたり、行政サービスの内容や範囲が変わったりすることもある。

交通の発達

通勤・通学のための公共交通や道路網が発達し、地域間の人の移動が活発になる。

産業構造の変化

伝統的な農業中心から、工業やサービス業など都市的な産業が増加。雇用形態も賃労働中心へ変わる。

生活インフラの整備

道路・水道・電気・通信・公共交通など都市的なインフラが整備され、利便性が向上する。

社会構造の変容

地域共同体の結びつきが弱まり、個人主義や貨幣経済が浸透。核家族化や単身世帯の増加も見られる。

土地利用の変化

農地が住宅地や商業地、工業地に転用されることが増え、農業用地の減少や土地の高騰が起きることもある。

文化・生活様式の変化

都市的な価値観や生活スタイル(消費志向、娯楽、教育観など)が普及し、伝統的な農村文化が薄れる。


◯農村と都市の幸福度


 日本の農林水産省の農林水産政策研究所では、2015年に農村と都市の幸福度の調査を行っている。これは最も不幸と感じる場合に0点、最も幸福と感じる場合に10点として回答する計測方法。

 結果は都市から農村まで幸福度に大きな差はないが、農村住民が都市住民より若干幸福度が高い結果となっている。また都市住民は所得が上昇するほど幸福度が上がる一方、農村住民は人とのつながりや信頼関係が豊かな人ほど幸福度が高いこともわかっている。


居住区分

主観的幸福度平均値

概要

都市住民

5.82

大都市や中心市街地など、都市的性格が強い地域に住む人

準都市住民

5.88

都市と農村の中間地域(郊外、ベッドタウン、地方中核市など)に住む人

準農村住民

5.66

地方の農村に隣接する町や中山間地に住む人(農村寄りの中間地域)

農村住民

6.04

典型的な農村地域に住む人(過疎地域、小規模自治体、農業従事率高)

出典:都市住民に比べて農村住民の幸福度は高い?何が人々の幸福度に影響を与えるのか,農林水産政策研究所



幸福度に影響を与える要素

要素

農村住民係数

都市住民係数

コメント

所得

-0.009

0.148

都市住民は所得が幸福度にプラスの影響、農村住民はほぼ影響なし(マイナスだが微小)

近隣住民とのつきあい

0.248

0.047

農村住民で強く幸福度に影響(統計的に有意)、都市住民は影響小さい

近隣で信頼できる人の数

0.269

0.029

農村住民で強く幸福度に影響(統計的に有意)、都市住民はほぼ影響なし

注:係数の数値が大きい程、その要素が該当する住民の幸福度に大きな影響を与えていることが推定される。下線は統計的に有意な結果であることを示す。
出典:都市住民に比べて農村住民の幸福度は高い?何が人々の幸福度に影響を与えるのか,農林水産政策研究所



 都市では物質的・利便的なメリットと社会的孤立があり、農村では強い社会的結びつきと物質的制約がある。また農村では若者の都市への流出が起こり、孤立する高齢者も増えている。こうした結果は、幸福度を高めるには物質的条件だけでなく、人間関係の質や生活の意味づけも重要だと示唆している。

 各国調査からデータを収集する大規模な国際共同研究プロジェクトのワールド・バリュー・サーベイ(WVS)の第4回調査(1999年〜2004年)では、回答者に社会的または宗教的グループに属しているか、友人と過ごす頻度、そして生活に幸福を感じているかなど、数百もの質問をした。頻繁に社会的交流がある人々とそうでない人々の自己申告による幸福度を比較することで、異なる社会において幸福と社会関係の間に実際に相関があるかどうかを把握することができる。
 次のグラフで、緑の点は月に一度以上友人と交流する人々の幸福度を表し、青い点は友人と過ごす時間がそれよりも少ない人々の幸福度を表している。このグラフは、ほぼすべての国で、友人と頻繁に時間を過ごす人の方が、そうでない人よりも幸福であると報告している。

幸福と友人関係

https://ourworldindata.org/social-connections-and-loneliness


 またオックスフォード大学のウェルビーイング研究センター(Wellbeing Research Centre)が、ギャラップ社、国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(UN Sustainable Development Solutions Network)、および独立した編集委員会との連携によって発行した「世界幸福度報告書2020年(World Happiness Report 2020)第4章 世界における都市と農村の幸福度の差」では、世界的に見て都市のほうが農村より幸福である割合が高かった。これは都市と農村の幸福度の違いについて、150か国規模で調査を行ったもの。

世界の都市と農村の幸福度

指標

都市が上

(都市>農村)

差なし

農村が上

(農村>都市)

幸福度

101か国

36か国

13か国

喜び、笑い、やりがいなどのポジティブな感情経験

58か国

75か国

17か国

不安、ストレス、怒りなどのネガティブな感情経験

37か国(都市の方が悪い)

93か国

20か国(農村の方が悪い)

出典:World Happiness Report 2020, Chapter 4 Urban-Rural Happiness Differentials Across the World
https://www.worldhappiness.report/ed/2020/urban-rural-happiness-differentials-across-the-world/



 また同調査では都市の発展段階に応じて幸福度が逆転するという都市のパラドックス(urban paradox)について、次のように指摘している。

「経済発展の初期段階では、都市部では所得や経済機会が多く、農村よりも幸福度が高い。しかし発展が進んだ段階では、所得増加・技術進化・交通・デジタルインフラの整備によって、農村がアクセスしやすく・多様化され、仕事の性質も変化する。結果として、農村部や小さな町の幸福度が都市と並び、時には追い越すことさえある。」

「開発途上国では、都市の利点が郊外や地方の居住地に比べて幸福度で上回る場合が多いが、先進国の都市住民の大多数にとっては、必ずしもそうとは限らない。先進国の農村地域では農業依存が減少し、都市圏の拡大により、多くの人々が大都市圏の近くに住み、働くようになっている。その結果、経済機会やサービスなど都市の恩恵を借りることができる一方で、都市特有の混雑、ストレス、物価高など負の影響からはある程度免れている。」

「また、不幸な人が都市へ、幸福な人が田舎へ移動するという選択的移住も影響している可能性がある。西欧では田舎の中でも不幸な層が都市に移動する傾向がある。結果として、都市には独身者、失業者、移民などが多く集まり、それが都市の平均幸福度を押し下げる要因となる。」


「この傾向は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、英国、アイルランド、ドイツ、イタリア、オランダといった国でも確認されている。さらに、中国や香港といった、急速に経済発展中の地域でも、大都市で平均幸福度が低下する現象が見られるようになっている。」

「北・西ヨーロッパ、北米、オーストラリア、ニュージーランドでは、都市より農村部の方が幸福な人々が多くなっていて、それ以外は都市の幸福度が高い。

世界全体でみる都市‐農村の幸福度の差(都市 – 農村)

地域

差(都市‑農村)+なら都市、−なら農村

東アジア

約 +0.56(都市)

サブサハラ・アフリカ

約 +0.56(都市)

南アジア

約 +0.47(都市)

南ヨーロッパ

約 +0.46(都市)

ラテンアメリカ

約 +0.38(都市)

北欧・西欧

約 –0.05(農村がわずかに上)

北アメリカ

約 –0.01(ほぼ差なし)

オーストラリア/ニュージーランド

約 –0.16(農村が上回る傾向)


 分析から明らかになったのは、農村部での幸福度が高い主な理由としては次の三つとなっている。

⚫︎地域への愛着
⚫︎住居の手頃さ
⚫︎単身世帯の割合の低さ(パートナーがいる割合の多さ)

 つまり都市部は収入や学歴で有利だが、農村部は住宅の満足度や地域のつながりで優位。単身世帯が少ないことも幸福度を押し上げる要因となり、結果的に、わずかながら農村の方が幸福度が高い結果となっている。

 反対に西側諸国の都市部の幸福度が下がる要因として次の分析結果がでている。
⚫︎通勤の長さ。
⚫︎所得格差の大きさ。
⚫︎交通渋滞や日常生活のストレス。
⚫︎治安の問題(安全性)。

 また教育と都市生活の関係について次のようにまとめられている。

⚫︎教育を受けるため、またはその成果を活かすために人々は都市に向かう。
⚫︎都市は高学歴者にとっては収入・選択肢・社会的ネットワークが豊富で生活の質が高い。
⚫︎反面、都市で働く低学歴者(サービス業等)は長距離通勤・低収入・住宅費の高さで幸福度が下がる。
⚫︎15〜29歳は低・中学歴者は農村の方が幸福度が高く、高学歴者は都市の方が幸福度が高い。


 全体としては都市の利点を享受できるのは、一部の経済的・教育的に恵まれた層に限られ、その他大多数の人々はむしろ幸福度が下がっている。


 ここまでを見ると、人とのつながりや信頼感が豊富で、格差が小さく、生活するのに余裕があり、生活ストレスが少なく、職業の選択の自由があることが幸福度に関係していると見えてくる。


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